鹿児島県の初夏の郷土料理=奄美大島
ユネスコ(国連教育科学文化機関)の世界自然遺産に鹿児島・沖縄両県の「奄美大島・徳之島・沖縄の北部および西表島」が確実に登録!!おめでたいニュースが5月10日にありました。小笠原諸島に続き、国内は5件目ですね。
今回、国の特別天然記念物のアマミのクロウサギ、イリオモテのヤマネコなど、国際自然保護連合のレッドリスト記載の絶滅危惧種95種が確認されているといわれています。この記念すべき時、今回は鹿児島県、特に奄美大島の郷土料理を中心に紹介させていただきます。
10年前、奄美大島出身の学生が、栄養教育実習で母校に帰り、私達は現地の教育委員会や現場に訪問しましたが、市挙げて、自然環境や伝統文化、特に食育に奄美の良さを活かした活力ある活動を展開していることを知りました。私達はまず奄美大島について行事としての食事について調査を実施し、名瀬の歯科医西公教先生と奥様、保育所の花井所長の協力を得て、保育所幼児の食生活と腸内細菌そうについて調査をさせていただき、何度か食育講演も招聘いただきました。
奄美の園児対象に食生活調査をさせていただいた結果は、2010年9月18日小浜保育所(所長花井牧子先生)で徳井先生と三成で食育講演をさせていただいた際に報告、20日の南海日日新聞に記事も出していただいていますが、子供たちの腸は良好で、腸内環境を調整する味噌を多く摂取しており、欠食がなく規則正しい食生活ができていました。奄美では、教育委員会、管理栄養士、保護者の皆さんの健康食に対する意識が高いこともうかがえました。
奄美大島は思い出深い大好きな地域なのです。その郷土料理の素晴らしさを紹介します。とてもヘルシーな料理です。
奄美大島は鹿児島と沖縄島の中間に位置しています。奄美群島の主要な島なのです。歴史的に大和文化と琉球文化の双方の影響を受けた地域といえます。気候は極めて温暖で雨が多く、猛毒の蛇、ハブのいる島でもあるのです。またウミガメが産卵に訪れる砂浜があり、数年間、企業様にお願いして、私達は餌となるレタスを届けたこともありました。
夏には台風が多く、中国や朝鮮半島や東南アジアなどの交易によって、砂糖きび・甘藷・落花生などが伝来され、この地域の食文化の中に定着しています。水稲は二期作、畑では大豆や麦が、そして四季の野菜が作られていますが、台風の被害や干ばつが続き、生活の知恵として「ソテツ」が食用に利用されてきました。西先生によると、ソテツの赤い実は澱粉を沢山蓄えているが有毒成分を含んでいるので、皮を除いて水にさらして有毒成分を除いて使い、実は味噌麴として使い、雄木は幹に澱粉(せん)が含まれていたので、毎日の粥に入れて食べられていたとの事でした。
家畜は豚が主で、ヤギや鶏も飼育されており、海の幸も近海魚や海藻が日常の食材として、郷土の料理に使用されていました。
1)鶏飯
鶏飯は中国から琉球王朝へ、そして奄美大島へ伝わったと言われます。 本来、鶏丸ごと一羽をじっくり煮込んでスープを取ります。白いご飯に具をのせて、鶏のスープをかけて食べる鶏飯は、食欲がない夏におすすめの一品です。 今回は家庭で簡単に作れるレシピを紹介しています。食材に鶏肉・昆布・シイタケを使用しています。旨味成分でアミノ酸の一種のグルタミン酸、核酸の一種のイノシン酸、そしてグアニール酸を含みますので、味の相乗効果で美味しく、塩分を控えても健康的で美味しい一品となるのです。 かつて、佐賀の(株)ヨコオフーズの横尾社長が熱心に、福岡で鶏飯をと、試作して「炭寅」でのメニューに出されていました。とても美味でした。パパイヤの漬物がトッピングにあると最高です。
2)がね
さつま芋は1600年頃に琉球から伝来し、やせ地でも栽培できるため、「薩摩いも」として全国各地に伝播されました。飢饉や戦時中は蒸したり煮て主食として食べられてきました。「がね」とは「かに」の形に整形して作ったかき揚げです。薩摩いもとニラが沢山入っています。甘味をつけて、生姜を入れて作るため、老若男女に好まれる一品です。
さつま芋は日本人に不足している食物繊維を含み、ビタミンB・C、そしてミネラルのカリウム・カルシウムなども含んでいます。さつま芋を切ると切り口から白色乳状のヤラピンが出ます。これは腸のぜん動運動に寄与します。よく洗って皮付きのまま調理して食べる事をおすすめします。
3)油ぞうめん
保育所の給食でも、そして西先生でのご自宅でもいただきました。美味しかったことが忘れられません。
油で煮干しをカリカリに炒めていました。そうめんを油で炒めて、塩豚肉とニラを入れ、出し汁を入れて最後に煮干しを上に盛ってできあがり。
簡単に作れて美味しい家庭料理です。今回は塩豚肉の代わりに天ぷら(さつま揚げ)を使いました。そして、カツオ節を天盛りにすると、旨味タップリ一品。イタリアのバジルを沢山使ったジェノバペースト入りパスタより病みつきになります。胡麻油を使うとより美味です。
4)さつま汁
島津藩の武士の士気を高めるために、薩摩鶏による闘鶏を奨励したそうです。負けた鶏をぶつ切りして根菜を入れた男料理で、麦味噌が使われます。
福岡のがめ煮を汁物にしたような料理です。食物繊維タップリのヘルシー汁物です。これも美味です。青ネギを沢山入れて下さい。
5)がじゃ豆
落花生に黒砂糖をまぶして作るがじゃ豆。奄美大島では黒砂糖は貴重な家庭に不可欠な食材です。以前、教育長が皮付きピーナッツを使うと香りが良いと教えてくれました。是非フライパンで空炒りして、少し焼き色をつけて作ると風味が良くなります。
失敗しない「りんかけ」は、フライパンに黒砂糖を入れ、水をその1/3量入れて加熱します。温度は105~115℃(小さい泡が出ます)。火を止めて落花生を入れて40℃になるまで混ぜます。過飽和状態となり、結晶が出ます。
6)かるかん
薩摩藩の島津家由来の菓子で、米の粉と山芋と砂糖で作った蒸し菓子です。明治になって県内の家庭で冠婚葬祭、来客時に作ってきたそうです。
このレシピは卵白を使っています。卵白の泡を安定させるために3回に分けて砂糖を入れると、水の量が少なくてもOK。また多量の砂糖を使用していますが、砂糖はデンプンの老化を抑制しますので、冷えても固くならず美味しくいただけます。
是非挑戦して作ってみて下さい。
新型コロナウイルス感染症(略してコロナ感染症)の第4波で福岡県にも緊急事態宣言がでました。重症患者も増え福岡県の医療体制も緊迫しています。ワクチン接種はコロナ感染症予防の鍵ですが、日本はやっと高齢者のワクチン接種が始まったばかりです。65歳未満はいつになるのか未定です。そこで、コロナ感染症予防のための生活習慣についてお話します。
1)サプリメントは女性ではコロナ感染症予防に効果がある
ビタミンC、D、亜鉛などの微量栄養素は、免疫機能や呼吸器感染症のリスク低減に重要な役割を果たすことがわかっています。しかしこれらの微量栄養素がコロナ感染症を予防するかどうかの科学的データは少ないため、今回これを検討した英国からの報告です。方法は「COVID-19 Symptom Study」というアプリを作成し、一般の英国人に利用してもらい次の情報を登録してもらいました。2020年7月末でのPCR検査受診の有無とその結果(陽性ならばコロナ感染症にかかったことを意味します)、性、年齢、病歴、過去3ヵ月間の継続的な栄養補助食品の使用とその種類などです。約37万人の英国人がアプリに登録しました。登録者の中で栄養補助食品を摂っている人と取っていない人のコロナ感染症の発症を比較しました。その結果、女性においてはプロバイオティクス(ヨーグルトなど乳酸菌、ビフィズス菌が入っている食品)、オメガ3脂肪酸、マルチビタミン、ビタミンDの栄養補助食品を摂取している人は摂取していない人に比べ、各栄養補助食品ともコロナ感染症の発症率は約10%低くなるというということがわかりました。男性ではこのような関係はみられませんでした。ビタミンC、亜鉛、ニンニクの栄養補助食品には効果はありませんでした。この研究だけで効果があるとの最終結論はでませんが、日本ではワクチン接種はまだ当分できませんので、それまではこのような栄養補助食品を摂取することは予防策の1つになるかもしれません。
2)運動はコロナ感染症の入院を予防し、死亡リスクを低下させる
米国疾病予防管理センターはコロナ感染症の重症化のリスク要因として、高齢、男性、糖尿病、肥満、心血管疾患などの基礎疾患の存在を挙げています。糖尿病、肥満、心血管疾患に関しては、運動不足がリスク要因の1つであることから、運動不足はコロナ感染症の重症化にも関連するのではないかと考えて、その関連を検討した米国の報告です。対象者は2020年1月1日~2020年10月21日の間にコロナ感染症と診断された患者の中で、診断される以前に運動測定のデータがすでにあった人です。運動レベルは、運動不足の者=0~10分/週、ある程度運動している者=11~149分/週、かなり運動している者=150分以上/週の3グループに分けました。運動レベルと入院率や死亡率などを検討したところ、かなり運動している者に比べて、運動不足の者、ある程度運動している者はそれぞれ入院率が2.3倍、1.9倍、入院後ICUでの治療が必要となった率が1.7倍、1.6倍、死亡率が2.5倍、1.9倍と大変高い値を示しました。緊急事態宣言で自粛が勧奨され、運動不足になっている人が多いのではないかと思われます。ステイホームといわれて家でじっとしていては逆にコロナ感染症になれば重症化する危険性があります。ステイホームでも運動をすることは重要です。運動量の目安としては、適度なペース(話すことはできる程度で息が上がるレベル:速足で歩く感じ)で1日30分、週5日間歩く運動で十分だそうです。
参考文献
1) Louca P, et al. bmjnph 2021;0. doi:10.1136/bmjnph-2021
2) Sallis R, et al. Br J Sports Med 2021;0:1–8. doi:10.1136/bjsports
腸内細菌叢の分析ができるようになって腸内環境と精神的健康度は関連があるという研究報告がだされるようになりました。そこで、今回思春期の女性を対象に腸内環境改善により精神的健康度が変化するかどうかを検討した英国からの報告です。思春期後期の健康な女性ボランティア64名(年齢18~25歳)を募集し、無作為に2群に分け、1群にはガラクトオリゴ糖サプリメント(1日7.5g)を、1群には形状が似ているがオリゴ糖を含んでいない乾燥シロップを、それぞれ4週間摂取してもらいました。対象者はこれらを摂取する前と4週間後に、特性不安、社会不安、気分、抑うつについての質問票に回答するとともに、腸内細菌叢も分析しました。その結果、ガラクトオリゴ糖サプリメントを摂取した群は、摂取しなかった群に比べ、不安レベルが下がり精神的健康度が改善していることが示唆されました。また腸内細菌叢では腸内細菌の多様性が示され、ビフィズス菌がより増加しました。以上からオリゴ糖を簡便に摂取することで若い女性の精神的健康度を良い方向に導ける可能性が示唆されました。
Scientific Reports | (2021) 11:8302 | https://doi.org/10.1038/s41598
自分の年齢を若く感じることは、様々な健康上の有益な結果と関連しています。しかし、このような直接的な健康効果とは別に、健康リスク要因(例えばストレス)の有害な影響を打ち消す効果があるかどうかはあまり検討されていません。そこで、自覚的ストレスが健康機能の変化に与える影響が自分を若く感じる人ほど小さいかどうかを調べたドイツからの報告です。対象者は40歳以上の5,039名で3年間調査しました。調査内容は、生活の中で感じるストレスの量と、歩く、着替え、入浴などの日常生活活動がどれだけ制限されるようになったかといった機能的健康について調べました。また、「あなたは何歳だと思いますか?」という質問を行い主観的な年齢を回答してもらいました。その結果、自覚的ストレスが大きいほど、年をとると機能的健康の急激な低下がみられました。この影響は年齢が高くなるほど大きくなりました。しかし主観的年齢が若い人では、自覚的ストレスと機能的健康状態の急激な低下とはあまり関係ありませんでした。つまりストレスがあっても、自分は若いと思っていることは、歩く、着替え、入浴などの生活活動の障害は低くなるという、ストレスからの保護効果がありました。しかも年齢が高いほどこのストレスからの保護効果は高いという結果でした。以上から自分は若いと思うことは、健康機能に対するストレスの悪影響を打ち消す効果があり、健康機能の低下を抑制できる可能性が示唆されました。年を取るほど自分は若いと思うことが大事なようです。
Psychology and Aging, 36(3), 322–337. https://doi.org/10.1037/pag0000608
赤肉は悪玉コレステロールを上げ心臓疾患のリスク要因になるという報告があります。そこで赤肉を食べるときに一緒に食べる他の食品の違いで脂質への影響があるかどうかを検討した米国からの報告です。対象者は59人で、次の4つの食事を1週間ずつ食べてもらいました。
①地中海式食+牛肉約14g/日
②地中海式食+牛肉約71g/日(米国の平均的な肉摂取量に相当)
③地中海式食+牛肉約156g/日
④典型的な米国式食(脂肪が多い食事)
地中海食とは、果物、野菜、その他の植物性食品をベースにした低脂肪の食事で、肉は主に鶏肉を使う料理です。健康的な食事であることが証明されています。研究の結果は、③や④の食事と比べ、①と②の食事は悪玉コレステロールが有意に低い値を示しました。つまり、赤肉好きな米国人が肉は食べたいが心臓病にはなりたくないと思ったら、果物、野菜やその他の植物性食品と一緒に赤肉を食べることで、心臓病は予防できる可能性があるということがわかりました。日本の焼き肉屋では野菜は別途注文しないといけませんが、隣の韓国の焼き肉屋さんでは、焼き肉を食べるときは必ずサンチュ(チシャ)がでてきて、肉をサンチュで巻いて食べます。肉とサンチュはペアーとなっており、これを補食と呼ぶ食文化があります。サンチュには肉の悪影響を打ち消す作用があるということでしょう。
Am J Clin Nutr 2021;113:1126–1136.