ハトムギはインドからインドシナ半島、中国南部を原産とするイネ科でジェズダマ属の植物であり、ハトムギの殻、薄皮、渋皮を除いたものが中医学では薏苡仁(ヨクイニン)と言われています。
ヨクイニンは中国の古典「神農本草経」に上薬、中薬、下薬の3つの中の上薬で紹介されています。中医学を基本にした薬膳でヨクイニンは食材分類で利水滲湿、性味は淡甘、帰経は脾・胃・肺経、効用は利水、むくみを取り、イボを取る、健胃作用です。このヨクイニンは長きにわたり中国では悠久の歴史を持って薬でもあり食でもあるという薬食同源に代表される植物なのです。長く継続して常食すると身が軽くなり気持ちが充実して元気になると中国では言われてきました。日本には奈良時代に中国から伝来したといわれます。栄養的には可食部100gにたんぱく質は13.3gと豊富に含み、カリウムも85mgを含んでいます。日本では穀類の一つとして救荒食品として食べられてきたようです。
日本でいうジュズダマとは同種だと言われていますが、ハトムギとジュズダマは食べたときのデンプンのテクスチャーが異なっています。8月頃に花が咲き、9月すぎると果実となり採取され、日干しして使用されます。
中村学園大学の薬膳科学研究所では産学連携事業の一つとして中医学の薬膳食材であるヨクイニンを使用した薬膳チップスを開発して販売していました。久留米市の三潴町で採取されたヨクイニンは五味、五色の〝薬膳チップス″として九州の食材と配合されて5種類開発しましたが、より健康なお菓子を、と現在は中止しています。近い将来、是非皆様へ紹介させていただきます。
そういえば、小学校の1~2年生頃、近所に自生したジュズダマで祖母は〝お手玉″を作ってくれました。季節は秋から冬の頃、こたつの中で上級生と一緒にお手玉をまず3つで練習、一定のルールのタイミングで上に放り投げてシャラ・シャラいう音に魅せられ次は歌にあわせて楽しんだものです。
今回は、いろいろに懐かしいハトムギを継続、持続して常食できる料理を紹介します。そのポイントは食材の調理の基本をしっかり押さえておく事。ハトムギは洗って、充分に水分を含ませ、弱火でコトコトまとめて煮ておく事(保存は冷凍)。各料理に1回30gを目安に配合してください。健康で美味しいヨクイニン料理の一品をお楽しみください。
ハトムギとは、日本では鳩が麦を食べることからその名の由来があるようです(しかし決して麦ではなくイネ科の植物です)。隣の中国では後漢(西暦約100~200 年)の頃、馬援(まえん)という人物がベトナムから持ち帰ったとされており、ハトムギの学名のma-yuen の語源にもなっています。江戸時代には徳川八代将軍の吉宗によってその栽培が奨励されたようです。ハトムギの種皮を除いた種子をヨクイニンといい、漢方薬として使用されています。作用として、清熱(炎症を抑える)、利尿、鎮痛、排膿、健脾止痛(消化機能を改善し痛みを抑える)、滋養強壮作用があるため、用途として浮腫、リウマチ、神経痛などの身体の疼痛、化膿症などの治療薬、イボ取り、皮膚の荒れなどに使用されています。
上にも書きましたように、ハトムギといえば多くの方はイボ摂りを想像されると思います。多くの報告がありますが、なぜ取れるのかはよくわかっていませんが、ハトムギには免疫賦活作用があり、この作用と関連しているのではないかと考えられています。ハトムギに滋養強壮作用がある背景にはこの免疫系の作用が関係しているのかもしれません。また、ハトムギは若い女性では美肌効果で最も馴染みがあるのではないでしょうか。実際、人を対象にした臨床研究では顔の皮膚の色素や紅斑度が減少し、肌荒れや爪の状態を改善することが報告されています。シミのうち肝斑に有効のようです。ハトムギには抗菌作用もあり、ニキビの改善にもいいといわれています。ハトムギは煎ってお茶として飲んだり、お粥として食べたり、昔から日本人が食してきた食材です。料理に使うことは少なくなりましたが、その効能はすばらしいものがあり、もっと活用したい食材の1つです。
フラボノイドは野菜や果物など植物の色素に含まれ、抗酸化作用や抗菌作用がある物質です。このフラボノイドを多く取ると、生活習慣病のリスクが低下し、特に喫煙者や大酒飲みの人には効果が高いというオーストラリアの報告です。データはデンマークでの約56,000人を23年間追跡したものです。毎日のフラボノイドの摂取量とその後のがんや心疾患の死亡率の関連を検討したこところ、毎日500mg以上の総フラボノイドを摂取した人は、がんや心疾患関連の死亡リスクは低い結果でした。これ以上摂取してもリスクの大きな低下はみられず、とにかく、1日500mg取ることが重要であることがわかりました。しかし喫煙者や飲酒者は500mgよりもっと多く取るほど、効果はさらに大きいようです。フラボノイドはいくつかの種類があり、りんごやたまねぎに含まれるケルセチン、茶やココアに含まれるカテキン、ブルーベリーや赤ワインに含まれるアントシアニン、ミカンやレモンに含まれるヘスペリジン、ごまに含まれるセサミン、ブロッコリーに含まれるケルセチンなどがあります。、茶1杯、リンゴ1個、オレンジ1個、ブルーベリー100g、ブロッコリー100gを食べると500mgのフラボノイドが取れます。
NATURE COMMUNICATIONS | (2019) 10:3651
山形県内に住む40歳以上の男女約2万を最長8年追跡し、笑う頻度とその後の死亡率や心疾患の発生率を検討した日本の研究です。健康調査開始時点で日常生活の笑いの頻度について尋ね、声を出して笑うことが、ほぼ毎日、週に1~5回、月に1~3回、月に1回未満の中から選んでもらいました。これらの回答から対象者を「週に1回以上」、「月に1回以上週に1回未満」、「月に1回未満」の3群に分け、それぞれの群の死亡率を比較しました。笑う頻度が「月1回未満」の群は、「週に1回以上」の群に比べ、死亡率が1.95倍高い結果でした。「週に1回以上」の群と、「月に1回以上週に1回未満」の群では死亡率に差はみられませんでした。また心疾患の発生率は、「月に1回未満」の群は「週に1回以上」の群に比べ1.62倍高い値でした。この結果から、笑うことは、死亡率や心臓病の発生率を低くする働きがあることが示唆されました。
J Epidemiol. 2019 Apr 6. doi: 10.2188/jea.JE20180249.
膀胱炎などの尿路感染症は女性に多く、かつ再発率も高いのですが、水を飲むことでその発生リスクが低下するという米国の報告です。米国では尿路感染症を発症した女性は、25%が6か月以内に、60%前後が1年以内に再発するというデータがあり、尿路感染症は多くの場合再発します。そこで、140名の女性を2群に分けて、1群にはいつもよりも1.5リットルの水を多く飲水し、あと1群には今のままで12ヶ月間の生活してもらいました。その結果、現状維持の群の女性では平均3.2回、膀胱炎の再発がみられましたが、1.5リットルの水を多く飲んだ群の女性はそれより少ない平均1.7回、膀胱炎が再発しました。膀胱炎になると抗生物質を服用しますが、膀胱炎治療のための抗生物質の服用回数も、現状維持群では3.6回、水を多く飲んだ群では1.9回で、抗生物質服用回数も少なくて済みました。再発までの平均間隔も現状維持群が84.4日で、飲水群では142.8日でした。膀胱炎は痛みを伴う病気で再発が多いと日常生活も困ります。水を少し多めに取ること、このように簡単でだれでもできることで膀胱炎の再発が予防できれば大変ありがたいことです。
JAMA Intern Med. 2018;178(11):1509-1515.