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2023年2月 二月の日本型薬膳

目からウロコの調理学

二月の日本型薬膳

はじめに

二月は、一年の中で寒さが最も厳しく、特に雪も多い季節ですね。
しかし、暦の上では3日頃は節分、4日は立春を迎え、間違いなく季節は春に向っていきます。
早春を告げる花は、大宰府天満宮の神木の「飛梅」。早咲きの白梅も香り豊かに膨らみ始めています。約2000種、6000本の白梅,紅梅も咲き始め、梅は百花の魁!私も、今年は梅の香りを楽しみたいと思います。

とはいっても寒中!!韓国の友人、料理研究家の李秀子さんから冬の味覚とお手紙が届きました。
「寒い季節こそ韓国料理です。昨年11月に漬けたキムジャンが食べごろです。お待ちしていますよ」と。
また、韓国ソウル市の宮中飲食研究院の韓福麗先生、妹の料理研究家の韓福善先生は、私たちの友人。2007年に中村学園大学が薬膳EXPOを開催した際には講演会に招聘し、皆さんに楽しんでいただきました。
「薬膳研究所の皆さんと一緒に韓国へお出かけください」と。行きたい!!行かなくては!!私の心は韓国スイッチが入ってしまいました。

今月は、韓国の友人達に学んだ韓国料理を簡単で美味しい、栄養バランスを考慮した韓国風日本型薬膳としてご紹介いたします。
韓国へ行くと、暑い夏の朝に欠かせない参鶏湯の美味しいレストランがロッテホテルの近くに沢山あり、よく通いました。
そして、高速道路のサービスエリアでいつも食べていた懐かしいキンパ。玄海町の知人から美味しい棚田米をいただいたので、ご飯に胡麻油と塩をほんの少量ふり、お海苔でぐるぐる巻きました。大学で管理栄養士国家試験の猛勉強している学生に差し入れしますと、美味しすぎるとのリアクションが。
糸島市の末松氏からは、無農薬の野菜をいただきました。その一つ、ブロッコリーは虫食いの穴有り葉っぱが沢山。その葉と茎を大事に美味しく食べるためにとキムチを作ってみました。驚嘆!野菜の辛味もあり、美味しく出来上がりました。
それに、梅燕菓という韓国風かりんとう。ぜひご自宅でお試しください。

韓国料理と薬膳

① 韓国の宮廷料理

伝統食文化の始まり;朝鮮王朝の初代の王である李成桂時代。
都を開城から漢陽(ソウル)に移し、新しく儒教を基本とした政治を確立。
儒教思想は、礼儀を重んじて、物事の手順や形式にこだわり、両班制度も確立。
食生活においても儒教の考えが反映。
王の膳(御床):銀製の食器、はし、さじ、螺鈿と漆塗りの食床、白磁の皿、五感を満足させる宮廷料理
朝鮮王朝:男子が出生すると宮中に残り、王妃は民間の貴族から嫁ぎ、女子の王女は民間に嫁ぐなど
結婚制度が宮中と民間の交流に大きな役割を果たし、伝統食文化の一つである宮廷料理は一般庶民まで波及していった。

② NHK テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」

韓国宮廷の料理や食医を紹介。一般の人に関心が持たれるようになった。
※韓国伝統医学
・伝統中医学の系譜。朝鮮半島で発展した医術・薬学である韓医学が伝承される。
・李朝時代の太宗の時に医女制度が創設。
・1611 年,宣祖の時代には韓医学のバイブルである「東医宝鑑」が編纂される。
韓国宮廷料理:韓医学の発展とともに、その理論を導入し、薬食同源の思想で王様の健康管理に役立てるために食養生の視点からつくられるもの。 韓国の重要無形文化財38号技能保有者(第二代宮廷料理)である黄慧性先生より、宮中の食文化に関する学問的背景や計量化された宮廷料理の調理方法を伝授される。現在は、韓福麗先生が継承している。

③ 宮廷料理と十二チョブ飯床

宮廷料理が韓国料理の粋である理由

各地方の食材が、優れた調理技術を持つ厨房尚宮(調理担当の女官)待令塾手(男性料理人)の手により調理され、最も整った形で伝承されたからである。
宮中での日常の食事である水刺床(御膳)

大型の円卓,小型の円卓、小型の角形の卓そしてコンロが準備された。
基本の献立:一二チョブ飯床
→原則として、一度に全部の料理が配膳、調理法と材料が重複しないようにする。

小さい器のチョブに以下のものを配置(写真2) 。
 12 種類の料理、2 種類の飯(白飯・赤飯)、
 3 種類のキムチ、2 種類の汁物、
 3 種類の醤、そして1 品の煮物。

④ 宮廷料理の特徴

(1) 各地方の特産物である穀物、海産物、肉類、野菜などが献上され、料理の種類も多い。
(2) 季節ごとの初物が宗廟に献上され、季節飲食と名節飲食(行事食)が発達。
(3) 牛肉と椎茸は一緒に調理(一緒に食べると口あたりが良い)。
(4) 食材の最良部位を使用し、淡味で薄味。強い香辛料や匂いの強い料理は作らない。
(5) 五方色の青、白、赤、黒、黄を調和させて調理。

中医学基礎理論の陰陽五行学説が基本。
五色と五味が調和(写真3)。
青:酸味、白:甘味、赤:苦味、黒:辛味、黄:鹹味
宇宙の森羅万象と自然の法則に従い、五方色を具現化するために調理された薬食同源を基本。

(6) 彩りを添える飾り(コミョン)は、味、色、形にも配慮。
自然の五色説に基づき作られ、食べる人への配慮と知恵が凝縮されている。
赤色:唐辛子や大棗、青色:芹や葱、黒色:椎茸や木耳
白色:卵白の卵焼きや栗
黄色:卵黄の錦糸卵
などを使用する。

⑤ おわりに

・韓国の伝統食文化である宮廷料理に使われている食材
→中国の本草書「神農本草経」に記載されている上薬が非常に多い

上薬:中医学の食療中薬
人間の生命を養い、長期間食べても害がなく長寿になると言われる。
高麗人参、桂皮、生姜、葱、大蒜、陳皮、胡桃仁、蜂蜜、枸杞子、胡麻、五味子、大棗、山薬、松の実など、消化吸収に機能する脾経・胃経の食材や老化に関わりのある腎経に入る食材で、骨粗鬆予防に効果の期待できる薬膳食材

・健康寿命を延ばす最も大切な1つが食事
→いかに健康によい食事でも、美味しく食べる事が出来なければ継続しない。
・敬老の精神が根底にある宮廷料理の文化=21 世紀に継承すべき薬膳文化

【健康増進を目指した食事】①個人に合った食②疾病を予防する食③科学的根拠のある食
→この条件を満たす健康増進を目指した健康食モデルが、まさしく薬膳なのである。

【参考文献】
三成由美:クッキングルーム韓国宮廷料理と薬膳,日本調理科学会誌Vol. 46, No.2, 139~141 (2013)

一陽来復の健康学:様々な感染症が流行しています

 現在、新型コロナウイルス感染症ばかりでなく、インフルエンザが全国的に増加しています。1月上旬の集計では、福岡県は全国2位の報告数でした。また感染性胃腸炎(ノロウイルスなどによる)もいまだ多く発生しています。しばらく寒い時期が続きますので、これまで通りこれらの感染症へ注意する必要があります。
 感染拡大の状況を踏まえ、「オミクロン株対応ワクチン」について接種を検討する旨のお知らせが行政から発信されています。現時点では、新型コロナワクチンの接種期間は、令和5年3月末までとなっているようです。新型コロナウイルス感染症に対するワクチン接種は、重症化を抑制する一定の効果があるようですが、感染を予防する効果は十分ではありませんでした。最近その機序を説明する研究成果が英国から報告されました。重症化を防止するには血液中の抗体価が長期間高いレベルに維持されることが必要ですが、ワクチン接種後血液中の抗体価は長く維持されることがわかりました。一方、感染を防止するための鼻粘膜における抗体価は血液に比べ長期間維持されないようです。このような理由で、感染リスクの抑制効果は低いと推測されました。論文では感染防止を目指して今後は鼻腔免疫を強化するワクチンを開発する必要があると述べられていますが、開発されるまでには時間がかかるようですので、感染防止はこれまで通りの対策をしっかりすることが大事です。健康一口メモに紹介しましたが、新型コロナウイルス感染症の症状のない無症状者に関する調査結果が報告されました。それによると、感染収束期では無症状者のうち感染している人は3000人に1人の割合ですが、感染流行期ではその10倍、300人に1人の割合でいることがわかりました。そのため、どんなに感染防止対策を取っても身近に無症状で感染している人がいる可能性があるため、現時点では感染を完全に防ぐことは困難であり、感染対策をしていた人がたとえ感染したとしても本人には落ち度はありません。これからも、マスク着用と換気の徹底が大事です。

参考文献
eBioMedicine 2023;87: 104402 https://doi.org/10.1016/j.ebiom.2022.104402

健康一口メモ

  • 無症状者のPCR検査は流行を予測するのに役立つ

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  • 発汗は血圧の上昇を抑える

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  • やはり肥満は健康によくありません

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