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2020年8月 夏の薬膳 苦味で美味しいイタリア料理

目からウロコの調理学

〈苦味で美味しいイタリア料理〉

今月は、イタリアのレストランや教会、バチカンの教皇庁で学んだイタリア料理を、簡単に家庭で作れるようにアレンジして紹介します。そしてまた、その料理が、まさに薬膳そのものなのです。美味しい、そしてヘルシーなのです。
中医学基礎理論を基本にした薬膳、その陰陽学説で、夏は「陽気旺盛」、自然条件は「暑」、陽気で盛んな季節。しかし、体の抵抗力が落ちた時には「暑」が邪となり体を侵します。梅雨の明けない福岡では、「湿」もまた邪として体を侵すので要注意です。真夏に向かい健康作りは、暑さや湿度から夏の臓「心」を守り、「脾」胃腸の働きを低下させない食事が基本となります。夏の色は赤、五味では苦味。食事は適度な「苦味」こそ美味しく食べるためのカギだと言えます。

〈真夏の薬膳食材〉

・中医学では、暑さによる津液や気の消耗を防ぐ、つまり熱中症対策の水分補給に【トマト・スイカ・メロン・豆腐など】
・高温多湿となるので、湿を除き気の巡りをよくして、食欲を増加させる【山椒・香菜・うなぎ・ヨクイニンなど】
・暑さによる不眠、情緒不安には、安心作用のある【小麦・蓮の実・百合根・大棗など】
・冷房のある環境では、体を温める【生姜・ニンニクなど】
・汗が出る時には「酸味」を【レモン・梅干しなど】

〈苦味は夏の料理の基本〉

人間が感じる五つの基本の味の「苦味」は、本能的に毒物であることの可能性を示唆するシグナルと言われ、人生経験を重ねて食べてよい物を認識することで、「苦味」は嗜好的に好まれる美味しい味となるのです。
「良薬は口に苦し」と言われ、胃腸薬は特に苦く、その苦い成分で唾液・胃液の分泌を促して消化を助けているそうです。
苦いと言えば「焦げ」!香ばしいですが、後に苦味を感じます。加工・調理の際に、食品に含まれるアミノ酸・タンパク質とカルボニル化合物の糖が結びついて化学反応を起こしてメラノイジンである褐色の物質を形成します。それがアミノカルボニル反応です。このキーワードは何度か紹介しましたが、発見者の名前をとってメイラード反応と呼ばれています。
では、どの程度の「苦味」なら香ばしく美味しいのでしょうか?
ある刺激に対して感覚的に反応を起こさせる最小の刺激量のことを閾値(いちき)といい、「検知閾」と「認知閾」があります。前者は水との差が認識でき、後者は甘味や酸味など味質が認知できます。特に「苦味」は「検知閾」と「認知閾」の間で味わいを増し、隠し味効果が期待できると報告されています。つまり、「苦味」を添加する事で料理が美味しくなると言えるのです。焦がして苦味の美味しさを感じるのは、「きつね色」とも報告があります。調理では焼き色を考慮する事も重要ですね。
また、苦味のある食品では、コーヒーのカフェイン、緑茶のカテキン・カフェイン、ココア・チョコレートのテオブロビン、レモンのレモニン、ハーブの苦味などが美味しさに寄与するという事なのです。

〈今月の料理を美味しくするポイント〉

・海の幸スパゲティのトマトソースに、5~10%ピュアカカオ(チョコレート)を入れると味にコクと深みが出ます。美味しい!!
・ピッツァとグラタンの焼き方は、最後は強火で「きつね色」まで焼きます。ピッツァのトマトソースには、山椒や唐辛子を入れてピリッと辛くしてください。汗が出て気の巡りがよくなります。
・サラダ・カプレーゼのソースは、バジルと松の実を入れて、ジェノベーゼにすると苦味で美味しさが増します。
・ビアンコ・マンジャーレ、これは直訳すると「白い食べ物」、フランス菓子のブラマンジェも同じ意味です。今回は、上にココアをかけて、苦味を添加しティラミスに仕上げました。苦味で最高の一品となりました。

苦味は単独では「アメニティ」を感じさせてくれませんが!微量で最高の味に引き上げてくれるのです。
今月も是非、ご家庭で調理されてみて下さい。

目からウロコの健康学:食物繊維は最高

 戦後の日本は食糧の乏しい時代が続き、栄養不足を解消するためさまざまな栄養改善を進めました。当時、栄養素の1つである食物繊維はカロリーがほとんどないということでビタミンやたんぱく質に比べ全く注目されませんでした。しかし、その後の高度経済成長とともに日本は飽食の時代を迎え、がんや脳卒中、心臓病などの成人病が増加しました。これらの病気の原因が食生活など生活習慣に起因しているという理由で成人病は生活習慣病と改められ現在に至っています。この生活習慣病の予防として、現在最も注目されているのが食物繊維です。カロリーがほとんどないという理由ではなく、食物繊維は生活習慣病の原因である高コレステロールなどの脂質異常症、高血糖など糖代謝異常を改善する機能を有しているとともに、がんの予防効果も報告されています。しかし、食物繊維が健康効果を発揮するためにはある程度の量を食べる必要があります。戦前は日本人は1日30g以上摂取していましたが、その後減少して現在ではその半分の1日15g程度になっています。最新の食事摂取基準は1日約20gが目標となっています。世界では1日30gの摂取が推奨されています。がんや心臓病、脳卒中、糖尿病などの生活習慣病、肺炎などの呼吸器疾患、抑うつ症状や認知障害のない、いわゆるスーパー老人と言われる人は、食物繊維を1日30g摂取している人が多いという報告があります。
 食物繊維を豊富に含む食材としては海藻、豆類、芋類、きのこ、全粒穀類、野菜、果物などがあります。毎日たくさんの食物繊維を摂るにはどんな料理がいいでしょうか?1年間の食生活調査をした結果、最も食物繊維を摂っている料理は「味噌汁」でした。先ほどの食材をたくさん入れた具だくさんの味噌汁は最高です。食物繊維は血圧を下げる効果もあり、食塩の作用を軽減してくれます。最新の研究では食物繊維は深い眠りを誘導する作用も報告されており、現代人の健康維持・増進には欠かせないものとなっています。

健康一口メモ

  • 植物性タンパク質は健康に良いようだ

     高タンパク質食が健康に重要であるといわれていますが、植物性タンパク質と動物性タンパク質の長期的な摂取が死亡リスクにどのような関連があるのか検討した報告はありませんでした。しかし今回、米国でその研究成果が報告されました。1995年から2011年までの米国国立衛生研究所の健康調査における男女416,104人を追跡したデータが使われました。調査開始時に食物摂取頻度アンケートにより植物性タンパク質および動物性タンパク質の摂取量を調べ、その後の死亡状況をチェックして、タンパク質摂取と死亡率の関係を分析しました。その結果、植物タンパク質の摂取量の増加は男女とも総死亡率の低下に関連していました。総摂取エネルギーのうち3%を動物性タンパク質から植物性タンパク質に置き換えると、総死亡率が10%低下しました。心血管疾患の死亡率は男性で11%、女性で12%低下しました。動物性タンパク質から植物性タンパク質への置換によって死亡率が低下した度合いをみると、卵のタンパク質と赤身肉のタンパク質を植物性タンパク質で置き換えることで死亡率は13%から24%低下することがわかりました。以上から食事中の動物性タンパク質を植物性タンパク質に変えることで健康と寿命に影響を与える可能性があることが判明しました。

    JAMA Intern Med. doi:10.1001/jamainternmed.2020.2790

  • 睡眠不足ではポジティブな感情になりにくい

     睡眠不足が感情にどのような影響を及ぼすのかを検討したノルウェーの研究です。対象者は18~35歳の合計52人の健康な人です。全員自宅で眠り、睡眠パターンを調べるとともに睡眠日記をつけました。まず習慣的な睡眠を7日間継続した後、次の3日間は平均睡眠時間よりも2時間少ない睡眠をとるよう求められました。1日目、4日目、8日目(ここまで通常の睡眠)、9日目および11日目(ここは睡眠不足期間)の午前9時に、反応速度を検査しました。また参加者はアンケートに回答して、20の肯定的感情と否定的感情も調べられました。その結果、睡眠不足の期間では反応時間は短くなりましたが、間違う率が上昇しました。これは睡眠不足のために低下した集中力を補うために、より迅速に反応するようになったと考えられましたが、より多くの間違いを起こすために、睡眠不足のときは高い精度を必要とする仕事は避けたほうがいいということがわかりました。また感情の面では、ネガティブな感情に関しては睡眠時間の違いでは明確な差はありませんでしたが、ポジティブな感情には明らかな差がありました。ポジティブな感情は、睡眠を1晩減らしただけで悪化し、3夜後にはさらに低下する結果でした。ポジティブな感情が少ないことはメンタルヘルスに大きな影響を与えることがわかっているため、睡眠は現代人のメンタルヘルス対策に重要な生活習慣といえるでしょう。

    Sleep, zsaa078, https://doi.org/10.1093/sleep/zsaa078

  • ステイホームでも家で運動を

     新型コロナウイルス感染症の蔓延を抑えるために世界中で自粛が行われましたが、その結果世界中で身体活動レベルの大幅な減少が起こりました。短期間でも家に閉じこもっていると、座ってばかりで身体活動レベルが低下し心血管リスクが増加することがブラジルの研究者よってわかりました。たとえば、1週間の歩行数が1日5千歩未満になると、上腕静脈の直径が減少し、血管の伸縮性が失われ、血管内皮に障害が起きます。また3時間から6時間ソファにずっと座っていると炎症反応(生活習慣病の発症と関連する反応)が上昇し、食後血糖値も上昇します。その他、インスリン抵抗性が高まったり(糖尿病のリスクが高まる)、動脈硬化が進んだり、体脂肪が増加したり、短期間の運動不足でも循環器疾患を引き起こすリスクが増加することがみられました。また高齢者では、筋肉量の減少が招き、転倒、骨折などのリスクを高めることが危惧されました。研究チームは家庭で運動することは安全であり、効果的に血中脂質を減らし、体組成や睡眠の質を改善すると報告しています。短期間でもじっとしていると、人の身体はさびてくるということでしょう。

    Am J Physiol Heart Circ Physiol 318: H1441–H1446, 2020