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2022年8月 8月家庭の薬膳

目からウロコの調理学

8月家庭の薬膳

8月は「葉月」と言われ「稲穂」が茂る「穂張り月」で、稲の穂が成熟してたれてくる月でもあるのです。そして「八月朔日」は旧暦の8月1日のことで、「朔」は欠けた月が戻るおめでたい日であると考えられ、初穂を神にささげ、豊作を祈る日でもあるそうです。
「葉」といえば柿の葉の新芽から落葉までビタミンCと機能性について20年近く研究を進めていましたが、本学薬膳科学研究所の徳井教授やポーリング博士のもとでビタミンCの研究をされていた佐賀大学農学部の村田アキラ先生に分析方法などご指導いただいたのですが、柿の葉のビタミンC量はまさに、夏の土用の丑の日から8月のお盆までが高い数値でした。太陽サンサンの夏にビタミンCは不可欠です。この時の葉を「天ぷら」にしたり、この葉で茶を作り、常時飲用することも健康にはおすすめです。 そして、今年の二十四節気で新暦の8月8日頃は「立秋」であり、8月23日頃は「処暑」です。8月の薬膳、自然条件は「暑」で陽気が盛んです。予防と治療は清熱です。夏に旬を迎える西瓜、胡瓜、トマト、南瓜などは水分が多く、ビタミンやミネラルの補給源になります。

1.野菜の栄養特性

調理に用いられる野菜類は、葉茎、塊茎、リン茎、種実、花など多様です。野菜類は水分の含有量が高く(90~95%)、糖質も細胞壁を構成する難消化性多糖類の食物繊維です。ビタミンDを除いて多くのビタミン類が含まれています。たんぱく質の含有量は少ないですが、ミネラル、カルシウムや鉄も含んでいます。まさに夏こそ夏野菜の苦瓜、南瓜、ナス、パプリカ、唐辛子、西瓜、胡瓜などの旬の食材を沢山料理に使いましょう。
これらの栄養素には、健康維持に必要な生体調節機能を有する成分も含まれていますので、野菜は優れものです。ですが、食欲不振や体力の消耗が激しく、また胃腸機能が低下しやすい季節ですので、鰻、蜂蜜、そして、たんぱく質を豊富に含む肉類、魚介類、豆腐などの大豆製品などを積極的に調理食材として使いましょう。

2.野菜の嗜好特性

各野菜の緑黄赤紫などの個性ある色味は、彩り豊かな料理に仕立ててくれ、食欲も増進させます。そして、味は呈味成分として、糖、有機酸、アミノ酸、核酸などの物質が含まれています。特に有機酸にはリンゴ酸、酒石酸、クエン酸などさわやかな成分もあります。味としては、甘味、酸味、塩味、苦味、うま味、辛味、渋味などの成分を含んでいます。特にアクといわれている苦味、えぐ味、渋味を含んでいます。ゆでて調理することも重要です。
また、野菜には特有の芳香もありアルコール類、エステル類、テルペン類、含硫成分(大根、キャベツ、葱)もあり、野菜そのものの香りを生かして調理をすることで料理の風味を引き立ててくれます。これらの香りは、好ましくない香りを消すために用いられています。
野菜のテクスチャーこそ食欲を促してくれます。生野菜のパリパリした歯ざわり。これは、細胞内の水分量やセルロース、ペクチンによって影響されるのです。

3.薬膳で夏の色は赤

夏が旬の野菜は、赤色を呈する色素を持っているものが多数あります。野菜類の赤色を呈する色素は、ほとんどがカロテノイドです。緑黄色野菜ではクロロフィルと共存しています。
カロテノイドの中でカロテンやクリプトキサンチンはビタミンA効力を示すので、プロビタミンAと呼ばれ栄養上重視されています。熱には安定であり、調理時の味付けの酸やアルカリではあまり影響はありません。カロテノイドは脂溶性であるため、油脂と一緒に調理して摂取することが望ましいです。このカロテノイドを含む野菜は酵素により分解されるので、低温で保存かブランチングして冷凍保存することが望ましいです。
<カロテノイドを含む食材>

カロテン(α、β、γ):緑茶、人参、南瓜
リコペン:トマト、スイカ
ルテイン:緑葉、卵黄
カプサイチン:唐辛子
クリプトキサンチン:トウモロコシ、ウンシュウミカン

4.8月家庭薬膳の献立

1)焼肉と夏野菜の冷やし中華

8月の旬の野菜を出汁で下茹でしたものをたっぷり準備します。焼肉の味付けは、高齢者はすき焼き味に、若者は焼肉のタレを使用するなどで対応させてください。

2)茄子と豚肉の満足味噌炒め

茄子、豚肉、にんにく、味噌、油で調理すると、栄養的にも味にも美味しい一品となります。田楽味噌を多めに作って保存し、毎日の料理に使うと時短につながります。

3)苦瓜の香り漬け

夏の薬膳で味は苦味です。沖縄県離島伊江村の民宿を経営されている古堅ご夫婦に出会い25年。各ライフステージにおける食生活及び腸内細菌叢について研究協力いただいた本学大学院卒管理栄養士の古堅守氏に、伊江村の旬の食材を美味しく調理していただき、郷土料理も学ばせていただきました。そのポイントを紹介しています。

4)山椒風味のヨーグルトアイス

北海道の久原本家の工場見学に行き、次の日白老の山に入り、山菜を探しました。山の中に生息しているホオノキや山椒の香りに癒され、ヨーグルトの中に山椒を刻んで入れてみました。上から蜂蜜と夏の果物を飾りますと、さわやか一品のできあがりです。是非試してみてください。

一陽来復の健康学:新型コロナウイルス感染症の流行第7波への対策

 2020年、2021年の4月、5月は新型コロナウイルス感染症の流行期でしたが、2022年のこの時期は沈静化して、このまま収束に向かうのかという期待もありましたが、その願いも空しく7月に入り新型コロナウイルス感染症の流行が再拡大し、現在第7波が猛威を奮っています。全国では1日に15万以上の人が陽性者となり、福岡県でも9,000人を超え過去最高の感染者数となっています。その原因として、これまでのBA.2株からより感染力の強いBA.5株に置き換わりつつあるためと考えられています。7月の第1週では全国の新規感染の36%がBA.5によるとみられていましたが、8月第1週にはほぼ100%がBA.5になると推測されています。第7波は今しばらく続きそうです。
 現在できる対策は、従来通り、マスク、手洗い、換気などの基本的な予防対策を続けることです。ただし、熱中症には注意しながらマスクの着脱をすることが大事です。ワクチンですが、現在BA.5対応のワクチンの実用化は秋以降になると予想されており、現在あるワクチンの予防接種が唯一取れる対策です。3回目接種から5ヶ月以上経過した60歳以上の方や基礎疾患を持っている方は、4回目の接種のお知らせがくるはずです。高齢者や基礎疾患を持っている方は、重症化しやすいため、予防接種を受けることを検討してください。
 2020年、2021年とも夏季に新型コロナウイルス感染症は流行しました。2022年も同じように流行期を迎えてしまいました。夏季は暑いため体調を崩しやすい季節です。普段から睡眠を十分にとって栄養をつけて、体調を整えることが大切です。秋には流行が収まることが期待されますので、それまではじっと耐えることになります。

健康一口メモ