大航海時代に最盛期を迎えたポルトガルは、各国の食文化に多くの影響を与えています。日本においては出島がある長崎と関わりが深く、長崎カステラが有名ですが、カステラの由来はポルトガルの伝統菓子「パン・デ・ロー」から来ています。「こんぺいとう」もポルトガルの「コンフェイト」が由来であり、「天ぷら」もポルトガル料理に起源をもつと言われています。
ポルトガルの首都リスボン北部、サンタレン県にファティマという地名があります。かつてはオリーブの木が点在する荒地だったこの都市は「ファティマの聖母」出現の地として知られています。このポルトガルのファティマに滞在したことがあります。実は、私の叔母「ファティマ竹内街子」は、聖パウロ女子修道会のバチカン最後の日本人シスターであり、今年89歳を迎え元気にイタリアのアルバーノの修道院に居住しています。その叔母のクリスチャンネームがファティマなのです。叔母と一緒にファティマの地に足を一歩踏み入れた時の一言は「オリーブオイルは健康に生きるための野菜であり食卓の薬なのよ」でした。ポルトガルは海あり山ありで気候に恵まれて作物も豊富に育ち、肉、魚、野菜類を使った伝統的な料理が今日まで継承されています。特に料理の基本は、この地のオリーブ油を使用している事であり、食材や調味料として使われ、玉ねぎ、人参、じゃがいも、にんにく、トマト、パセリなどと一緒に調理に用いられています。またコリアンダーやハーブも味のアクセントとして使われています。
ポルトガルの首都であるリスボンは大西洋に面した港町で、とびっきり新鮮で美味しい料理との出会いに期待しましたが、最初に出会った料理はイワシの塩焼きでした。魚の捕獲量が多いといわれますが、調理法はシンプルで、マグロやイワシそして干したタラなどの魚を塩で味付けして焼いたり、煮たり、蒸したりでまさに日本の大衆料理のようです。ポルトガル料理に不可欠な飲料は、マディラ島のワインと本土のポートワインです。原料のぶどうの品種にあわせて、また甘味の強さに合わせて、甘いデザート、チーズ、ナッツ、魚介のオードブルを楽しめます。最後のお楽しみのデザートは、鶏卵、乳製品を使い、シナモン、バニラで香り付けしたポルトガルの代表的なカステラ、エッグタルトがおすすめの一品です。今月はポルトガル料理の代表的なものを紹介します。
ポルトガル人は1543年種子島に漂着し、鉄砲(火砲)を伝えたとされており、日本との交流ははるか400年以上前からです。ある縁でポルトガルを5年前に訪れました。首都リスボンのホテルには16世紀末のポルトガル船帰港風景の南蛮屏風が飾られていましたが、その屏風に描かれている国(日本)がどこかを知っている人はだれもいなく、今ではポルトガルにとって日本は遠い東方の国の1つのようです。リスボンの港には、世界の大航海時代を切り開いたバルトロメウ・ディアス(アフリカの喜望峰到達)やヴァスコ・ダ・ガマ(インド到達)が大西洋の大海原に出航する彫像が建てられています。よくまあこんな遠い国から日本まできたなあというのが実感でした。
ポルトガルから日本に来るまでの航路は喜望峰、モンザンビーク、インド、スリランカ、そして、マカオです。そのため、今でもマカオにはポルトガル、アフリカ、インドなどの影響を受けた料理があります。
ポルトガルは日本と同じく海鮮料理が大変美味しく、タコやイカも食べられています。オリーブオイルもよく使われており地中海料理に近いヘルシーな食生活です。さすがに刺身は見ませんでしたが、海鮮焼きは日本と同じような料理です。ポルトガルの中部地方には世界的に有名なファテイマというキリスト教の聖地があります。1917年その田舎町にマリア様が3人の羊飼いの子供の前に現れ、その後の世界大戦勃発などさまざまな予言をしたという伝説があり、昨年の2017年には100周年記念祭が開催されました。日本に西洋文化を紹介してくれたポルトガル、サッカー選手クリスティアーノ・ロナウドで有名ですが、海の幸の豊富な国同士、これからも交流が続きますように。
ふだん食べている食事と細胞の核にあるテロメアの長さとの関連をみた米国の研究です。テロメアとは細胞の染色体の端にあるものです。私たちの体の細胞は何度も分裂を繰り返し、そのたびにテロメアは短くなっていきます。短くなりすぎると、最後には細胞が分裂することができず細胞は老化していきます。そのため、テロメアが長いほど寿命は長いといわれています。どういう食事を取っているとテロメアの長さを維持できるのかを調査しました。食事の評価として、健康食の指標となる①地中海料理スコア、②高血圧予防食スコア、③健康食スコア、④代替健康食スコアを使って個人の食事の健康食レベルを算定し、これらのスコアが高いほど健康的な食事といえます。これらのスコアとテロメアの長さの関係を分析した結果、それぞれのスコアが高い人はテロメアが長いということがわかりました。つまり、野菜、果物、豆類、全粒穀物、魚類、鶏肉などの摂取量が多く、糖分、塩分、赤肉、加工肉が少ない食事を取っている人は長生きをしそうだということが遺伝子レベルでもあきらかにされました。
American Journal of Epidemiology, kwy124,
https://doi.org/10.1093/aje/kwy124
5500名の女性を対象に20年以上追跡して食生活調査と苦味の感受性を調べた英国・米国の研究です。苦味に対する感受性を調べるためにフェニルチオカルバミドという物質を味わって苦みを感じる能力を指標としました。研究を開始する前は、苦味感受性の高い女性は野菜や果物の摂取量が少ないために、がんの発症率は高くなると予想しました。しかし、研究結果は苦味の感受性のレベルと野菜や果物の摂取量には関連はみられませんでした。ところが、最も苦味感受性の高い女性(苦味が苦手な人)は、最も苦味感受性の低い女性(苦味をあまり感じない人)のがん発症率より58%も高い結果となりました。次に高い感受性がある女性は、最も苦味感受性の低い女性のがん発症率より40%高い結果を示しました。苦味の感受性が高い人はどうも癌になりやすい可能性があるという結果でした。なぜそうなのかは現時点ではまだよくわかっていませんが、野菜や果物以外の食品の摂取が関係しているかもしれないと考えられています。
European Journal of Nutrition、06 July 2018
いつもより朝食を1時間半遅く食べ、夕食を1時間半早めるような食習慣を続けると、体脂肪がどうなるかを検討した英国の研究です。対象者は過体重(標準体重よりは重いが肥満ではない)の人で、無作為に2群に分け、①朝食を1時間半遅く、夕食を1時間半早めに食べるグループ、②いつもの通りの時間に食事するグループとしました。これを10週間続けてもらい、食事の量は自由にしました。10週後、体脂肪の変化を測定したところ、①のグルールは②のグループに比べ、2倍以上減少していました。①のグループは②のグループに比べ食欲が緩和され、食事量は減少していたことが関係しているのではないかと考えられました。ただ、仕事などで①のような食事時間を継続できそうな人は4割程度で、なかなか今の生活時間を変えることは難しいこともわかりました。しかし、食事時間を少し変えることで、体重を減少させる可能性があることが示唆されたため、さらに研究を続けていくということです。
JOURNALOFNUTRITIONALSCIENCE doi:10.1017/jns.2018.13