薬膳とは
中医学の理論をもとに、気候・風土、季節、および個人の体質にあった食材を選び、それを組み合わせ、色、香り、味に満足できる食事 (ヒトは生存するためには、自然環境に適応していくことが必須)
- 気候・風土にあった食事(伝統食)
- 季節にあった食事(行事食)
- 個人の体質にあった食事(家庭料理)
- 病気を予防する食
- 健康効果が実証されている食
健康モデル食・日本型薬膳の推進
1. 一汁三菜のお膳文化(量)
室町時代に完成されたお膳文化(飯、汁、主菜、副菜、副副菜)である。一汁三菜が揃うと、栄養のバランスがよい。
2.四季の食材の利用(質)
四季の“旬・はしり・なごり”の野菜、果物、魚介類の利用。食材の地産地消は安全で栄養的にも優れ健康にもよい。
3.道元禅師(1200~1253)の典座教訓、赴粥飯法のおいしさの本質
- 1) 三徳を心得て料理する
- ・ 軽軟(軽い味で柔らかい)
- ・浄潔(食物も食器も清潔で安全である)
- ・如作法(献立や料理方法や盛付けや食べる人へのホスピタリティ精神)
- 2) おいしさの本質
- ・五味(甘味、酸味、塩味、苦味、旨味)
甘酒、酢、みそ、かつお節、酒などの発酵食品 - ・五色(黒[紫]、緑、黄、赤、白)
- ・五法(生物、煮物、焼物、蒸し物、揚げ物)
4.イタリアの地中海式ダイエットと修道院の食事の導入
南イタリアの1960年頃の地産地消の地中海料理は健康効果が実証されている。イタリアの修道院の食事は健康増進、疾病予防の考慮がなされ、無駄がなく、個人に合った食事。
5. 中医学基礎理論の薬膳の導入
季節や個々人の体質にあった食事を提供するために、中医学基礎理論の健康増進、疾病予防の薬膳の考えや食材を利用する。
日本型薬膳は排便で評価
日本型薬膳は、規則正しい排便と腸内細菌叢で評価する。腸内の環境を改善させることは、有害菌の増殖抑制や便性改善等につながり、ヒトの健康維持・増進に大きく関与される。 中医学では、人体の排便、排尿の障害が病気の原因として重視されている。 排泄をスムーズにして、体のバランスを整えることが健康増進につながり、特に野菜類が大切だと説いている(黄帝内経)。
今月は中医学からみた花粉症の病態、および花粉症対策のための食材について話しをします。まず花粉症の原因としては、過食や冷飲などで①脾胃(消化器系)が弱り、脾胃は肺やじ腎の機能に関与するため、②肺の機能低下(鼻水、くしゃみなどがでる)、③腎の機能低下(身体が冷える)が起こりやすくなります。一方、ストレスなどが④肝の機能に影響し熱がこもり、目の充血や乾燥による痒みなどが出現しやすくなります。①や②の状態のときには生姜、ナツメ、シナモン、③のときは、山薬、シナモン、④の場合は百合根、黒大豆、クコ、黒ごまなどがいいといわれています。
また花粉症の体質改善食材として、次の4つがあります。
- 1.身体を温める食材
- 例:しそ、生姜、長葱、シナモンなど
- 2.体内の水分を取る食材
- 例:ハト麦、とうもろこし、冬瓜、空豆、ドクダミなど
- 3.気を補う食材
- 例:山薬、ナツメ、穀物、芋類、豆類、きのこ類、南瓜など
- 4.消化吸収機能を高める食材
- 例:紅麹、サンザシ、粟、稗、赤豆など
やはり地中海料理は脳にいい!
地中海料理とは、イタリアやスペインなど地中海沿岸の国々で食べられている食事で、その特徴は果物や野菜、オリーブ油、豆類、小麦や米、魚介類、乳製品などの食品を中心にした食事である。またワインもよく飲みますが肉類は多く食べません。70歳前後のスコットランドの人967名を対象に食事調査と核磁気共鳴画像法(MRI)で脳の大きさを測定しました。3年後にも脳の大きさを測定し、食事内容で脳の大きさにどのような影響があるかを検討しました。その結果、食事が地中海料理に近い人ほど、脳の萎縮は小さことがわかりました。地中海料理の食品をバランスよく取ることが脳を守るようです。
出典:Neurology,2017;88:1–7
肩の痛みは心臓病のサインかも
これまでの研究で心臓病のリスクが高い人は、手根管症候群、アキレス腱炎、テニス肘など、関節や筋肉の痛みがでやすい傾向があることがわかっています。そこで、肩関節やその周りの筋肉などの痛みも心臓病の発症要因と関係するかどうかを検討しました。1226名の労働者を対象に、心臓病の発症要因となる高血圧、高コレステロール、糖尿病等と、肩の状態を調査しました。その結果、肩の状態が悪い人はそうでない人に比べ、心臓病の発症要因を持っているリスクが4.5倍も高いことがわかりました。つまり肩の状態が悪い人は心臓病の発症率が高い可能性があります。心臓病予防のためには、肩の状態も注意する必要がありそうです。
出典:Journal of Occupational & Environmental Medicine-DOI: 10.1097.2016
週末だけでも運動したほうがいい
厚生労働省の『健康づくりのための身体活動基準』によると、18歳から64歳では毎日6000歩歩く運動量が健康づくりに必要となっています。しかし、日々健康的な生活習慣を続けることはなかなかうまくいきません。そこで、時間がある週末に運動される人(週末型)がいますが、週末だけの運動でも健康になれるのかどうかを検討した英国での研究があります。それによると、週末型の人は、まったく運動していない人に比べ、心血管疾患死リスクは40%、がん死リスクは18%低いことがわかりました。これらの死亡リスクが最も低い人は日常定期的に運動をしている人でしたが、運動をしないよりは週末だけでも運動した方が健康にいいようです。
出典:JAMA Intern Med. doi:10.1001.2016