9月初秋の家庭薬膳
残暑は厳しいのですが、朝夕は涼しくなりましたね。皆様お元気でしょうか。
今年は9月8日頃から秋分9月23日までの期間が24節気で「白露」。夜の間に冷え込み、草花に朝露を浴びることで名付けられたのでしょう。
それから、9月9日は重陽の節句です。奇数を陽、偶数を陰といい、一番大きい奇数の9が重なるので、五節句の中で一番“おめでたい”日なのです。地域の食材で行事食を作り、お酒に菊を浮かべてハレのお祝いをしてきたのですね。お花といえば、かって日本人が秋に愛でた草花の七草、山上憶良の万葉集の2首の歌が始まりだそうです。残念ながら食べられませんが7つの覚え方を紹介します。
「お・す・き・な・ふ・く・は」で女郎花(おみなえし)、尾花(おばな=すすき)、桔梗(ききょう)、撫子(なでしこ)、藤袴(ふじはかま)、葛花(くず)、萩(はぎ)です。今年の秋は七草を食卓に生けてみませんか。
今月の初秋の薬膳は中医学の陰陽五行学説から考えますと、秋は五行の金であり、五臓の肺と関わりが深く、顔色が白くなると肺に異常があり、肺を養うのは辛味であり、その食材の欠乏や過剰は避けることが重要なのです。またこの季節は温燥なので、涼性の甘味・苦味の食材で肺を潤し乾燥を予防することも重要です。家庭薬膳の基本は旬の食材をフル活用して、美味しさにこだわって調理をしてヘルシーな料理を食卓へ登場させることなのです。
まず、自然の中の大地に立って大きく深呼吸を数回してから、調理を始めませんか。今年のお盆前に、鯵の水揚げ量日本一のアジフライの聖地である松浦市へ行ってきました。
今が旬の130g以上のマアジ。町の食堂で松浦市近海で水揚げされたブランドの魚を三枚に開き、パン粉を付けて揚げてくれたアジフライに舌鼓み。衣はサクサク、身はふっくらでノンフローズンの味の良さに感動しました。
松浦市福岡事務所より8月末に天神中央公園でアジフライの販売イベントがあるとメールも届いていました。2005年からFBK(福岡ビジネス協議会)メンバーとなり、協議会が松浦市へのまちおこし支援をスタートした2013年頃からアジフライのファンなのです。
魚の成分組成は種類、養殖か天然、部位により異なりますが、水分65~75%、タンパク質20%、脂質は5~15%程度で食肉に劣らないたんぱく質含量です。しかし小学校の児童に調査しますと魚は嫌いな食材でした。これは、調理の方法が問題なのです。
漁獲直後の魚は無臭ですが、鮮度の低下に伴い生臭くなります。生臭いにおいの原因物質は、トリメチルアミン、ジメチルアミンです。
魚の不快臭を抑えておいしく調理するためには、下処理した魚一尾を水洗いする、香味野菜・香辛料や発酵調味料に含まれる香気成分による魚臭のマスキングを利用する、レモン汁や梅干しなどの酸の添加、牛乳などのコロイド粒子によるにおいの吸着を利用することが重要です。
また、魚臭は加熱により弱められます。加熱時間や濃度によりにおいが変化します。長時間煮ると生臭みは減少し、煮熟香が生成します。これは溶出したエキス分の成分の糖とアミノ酸のアミノ・カルボニル反応によるものです。調味料により不快臭もマスキングされて風味が向上します。子供たちから「おいしい」といわれる魚料理にチャレンジしてください。
夏旬をむかえる野菜は色とりどりで鮮やかです。夏色のトマト等の赤色はカロテノイドで調理の過程で安定しています。緑色のオクラや青菜のクロロフイルは加熱時間が長くなったり酸性の食材や調味料で褐変するので、短時間加熱、酸性の調味料は食べる直前に使用します。美しい紫色の茄子は切ったらポリフェノール成分が酸化されて褐変するので水にさらします、水にさらすことで渋みのアクも抜けます。茄子の皮の紫色の色素はアントシアニン。水に溶けやすいため、色素の溶け出すのを防ぐために170℃前後で素揚げ、油通しをすると油で表面が覆われるので、色素が汁に溶け出しにくくなります。味噌汁に茄子を入れると色が抜けるため一度油で炒めて使うと色鮮やかな茄子の味噌汁になります。低エネルギーな料理をつくるには、揚げるのではなく、フライパンに油を2㎝程度入れて炒め揚げにしたり、茄子に油をまぶして加熱すると良いでしょう。
1)さつま芋とちりめん飯
さつま芋のほかにも、秋収穫の里芋もご飯と相性がよいです。里芋は皮つきのまま10分茹でて、皮を手でつるんとむき、切って米と炊飯してください。青のりを天盛すると香りがよいです。
2)南瓜と冬瓜の味噌汁
秋野菜は何でも、たっぷり入れて味噌汁に。日常不足の野菜が摂取できます。
秋はショウガ汁、柚子胡椒、七味唐辛子など辛味の食材を添えると美味しくいただけます。
3)鯵フライ
鯵の下処理をして、小麦粉を茶こしでふるってつけて、卵液はたっぷりつけます。最後にパン粉を両面つけますが押さえつけないようにします。油で揚げたら、アジフライを立てて置き、油をよく切ります。
4)茄子の南蛮揚げ
茄子の紫色を鮮やかに保たれる調理をします。
つけ汁はそうめんのつけ汁に酢やレモン汁を少々入れると、簡単に時短調理となります。唐辛子、ショウガ、青ネギなど薬味を上手に添えます。
5)無花果の胡麻クリーム
この料理は旬の無花果を蒸してソースをそえました。
胡麻やクルミをすり鉢ですって、マヨネーズかヨーグルトを入れて伸ばして味噌や蜂蜜で味を調整すると美味しいソースとなります。
加熱時間の少ない、初秋の薬膳をお楽しみください。
8月18日に国立感染症研究所などのチームが、現在流行しているBA·5株に対する3回目ワクチンの発症予防効果は3回目接種後2週間以上3か月未満で65%、3か月以上でも54%であったことを報告しました。BA・5株はワクチンを接種してもその防御をくぐり抜けて感染することがあるといわれていましたが、ある程度発症を抑える効果があることが判明し、やはり現在できる新型コロナウイルス感染症への対応としては、3回目を接種していない人はできるだけ接種することが望ましいと思われます。
現在、日本では4回目接種が開始されていますが、イスラエルの研究報告によると、60歳以上で4回目のワクチン接種後14日から30日目において、オミクロン株による感染、発症(症状出現)、入院、重症化、死亡に対するワクチンの抑制効果はそれぞれ5%、61%、72%、64%および76%であったということで、ワクチンの効果はあるようです。
新型コロナウイルス感染症における感染性ウイルスの排出は、症状が出た後2~5日で排出は最も高く、症状発現後10日で顕著に減少します。しかし、発症後6~9日目に感染性ウイルスが検出された症例では、症状消失後0~2日目にも感染性ウイルスが検出されることがあります。これらの研究報告により、現在療養期間は、症状がある場合は、症状が出た日から10日以上かつ症状軽快後72時間経過後に療養解除となっています。また症状がない場合は、検体採取日から10日経過後(または採取日から6日経過後に24時間以上空けて2回PCRなどの検査を行いともに陰性が確認された場合)に療養解除となっています。
まだまだ、流行は減少する傾向がみられません。ワクチン、マスク、換気でこの暑い夏を乗り越えましょう。
参考資料
①https://www.yomiuri.co.jp/medical/20220819-OYT1T50123/
②N Engl J Med 2022; 386:1603-1614 DOI: 10.1056/NEJMoa2201688
③Emerg Infect Dis. 2022 May;28(5):998-1001. doi: 10.3201/eid2805.220197
④https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202109_00005.html