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2022年5月 初夏の薬膳 初夏の米粉を使用した家庭薬膳

目からウロコの調理学

初夏の米粉を使用した家庭薬膳

(1)米粉が注目されています。

今、日本では小麦の価格が高騰しています。価格変動の少ない米の米粉が注目されているのです。2021年の夏の気温が高く、乾燥により米国やカナダの小麦が不作であったこと、また、世界の小麦粉輸出の主要国であるロシアとウクライナ。このロシアがウクライナを侵攻して長期化しているため、小麦や小麦粉の製品までもが価格上昇しているのです。
この注目されている米は、世界3大穀物の1つであり、日本においては、「豊葦原みずほの国」といわれ、食文化の中心を担ってきました。しかし、日本の食料自給率は約40%と低く、日本の食料は海外に依存している状態です。食料の自給率を高めるためには米粒として摂取するのみでなく、米粉として利用することがとても重要です。これまでに日本では米は和菓子に使われてきましたが、ベトナムや中国においては、フォー、ライスペーパー、ビーフンなど主食となる材料に米粉が利用されていました。
 米粉を継続持続して無理なく安全にヘルシーにおいしく食べる事が日本人の健康に寄与し、自給率向上にも寄与しますので、今回は米粉のメニューを提案いたします。

(2)米の調理

①調理操作による組織・物性の変化
 玄米:胚乳、ぬか層、胚芽の3つの部分から構成されています。
 精白米:玄米から搗精(とうせい)してぬか層と胚芽層を削り取ったものです。でんぷんはアミロースとアミロペクチンから構成されています。
もち米はアミロペクチン100%、うるち米はアミロース20~30%、アミロペクチン80~70%です。
 最近ではアミロース含量の低いうるち米など新しい形質をもった新形質米も開発され、老化しにくい性質を持った米飯が作られています。

②米の栄養特性
 米の主成分はでん粉で約75%を占めており、たんぱく質は6~8%、水分は約15%です。
 特徴は、たんぱく質は良質ですが、必須アミノ酸のリジンが少なく、トリプトファンやメチオニンも少ないのです。無機質やビタミン類は玄米には多く含まれ、精白すると少なくなります。リジンが多く含まれる食品は大豆です。
 米と大豆や大豆加工品を一緒に食べる事をお勧めします。

(3)小麦粉の調理

小麦の代わりに米を使うので小麦粉の事をよく理解することが重要です。

①調理操作による組織・物性の変化
小麦:外皮、胚芽、胚乳からなっており、胚乳部を粉として分離し、小麦粉として利用しています。
小麦粉のたんぱく質含有量は米より多く含まれています。
  強力粉…11.5~13.5%、 準強力粉…10.5~11.5%
  中力粉…8.5~10.5%、 薄力粉7.0~8.5%
  デュラム粉…11.0~14.0%

②小麦粉生地の形成
グルテンの形成:小麦粉を特徴づけるたんぱく質はグルテニンとグリアジン。水を加えると吸収して絡み合い、網目上の構造であるグルテンを作ります。グルテン形成のためには、こねた生地を一定時間休ませておく“ねかし”操作をする事が効果的です。
小麦粉に50~60%の水を加えてこねると粘弾性のある塊のドウになり、パンやうどんに加工されていきます。

③添加物の性質
食塩:グリアジンの粘性を増し、グルテンの網目状組織を緻密にします。
砂糖:親水性であるため生地中の水分を奪いやすく、グルテンの形成を妨げ、伸展性、安定性が増加します。
油脂:水とたんぱく質の接触を妨げるように働き、グルテンの形成を妨げます。
卵・牛乳:水とほぼ同じように働きます。コロイド状に分散している脂肪球により、生地に滑らかさがでます。

④小麦粉の膨化調理
1.酵母による膨化:グルテンを十分に形成させた小麦ドウを酵母(イースト)の発酵によって発生した二酸化炭素で膨化させる調理。
2.化学膨化剤による膨化:炭酸水素ナトリウムから発生した二酸化炭素が生地を膨化させます。バター、砂糖、卵などをよく撹拌してからベーキングパウダーと合わせた小麦粉を混ぜて作ります。

⑤ルー:薄力粉を油脂(おもにバター)で炒めたもの。
白色ルー(ホワイトルー、炒め最終温度120~130℃)、淡黄色ルー(炒め最終温度140~150℃)、褐色ルー(ブラウンルー、炒め最終温度170~180℃)

⑥てんぷらの衣:小麦粉(薄力粉)は卵水(卵:水=1:1.2~3)でざっと混ぜ、材料に絡めて揚げ、もろくて軽い衣がついた状態で仕上がるのがてんぷらです。水分が油脂と入れ替わり、水分10~15%、脂質45%前後になったものが美味しい料理なのです。小麦粉のグルテンが形成されると脱水されにくく、からりと揚がらないのでたんぱく質の少ない薄力粉を使い、冷水で粉を解き、撹拌も短時間で行うようにする事が大事です。

(4)米粉について

日本米粉協会は(29年5月設立)米粉の1番:菓子・料理用、2番:パン用、3番:麵用と統一の用途表記を行う、米粉の用途別基準を開始されています。 つまり、料理によって米粉を選ぶことができるのです。

米粉の特徴
1.米粉を使って調理するとパンや麺は、もっちりした食感となります。
2.米粉は小麦粉と異なりダマになりません。
3.米粉は人に必要なアミノ酸バランスがよい。アミノ酸スコアは米65、中力粉41。
4.米粉を使用した材料は少し甘く感じます。
5.米粉で揚げ物をするとたんぱく質が少ないため、油の吸収率が低く、小麦粉に比べてグルテンはないため、低エネルギーの料理となり、サクサク感がします。(小麦粉は米粉の1.5倍の吸収率)
6.米粉の調理をして器具を洗浄したり、手を洗うと、グルテンを含まないためサラッと少ない水で洗えます。
7.米粉パンを1人が1か月に3個(米粉80g/個)食べると自給率が1%アップすると、農林水産省のHPに記載があります。

(5)5月の米粉を使用した薬膳

1.米粉のピッツァの生地の膨化はイーストとベーキングパウダーを使います。ふっくら、もっちり美味しい生地になります。
2.初夏のホワイトシチューの濃度は食材が煮えてから牛乳と米粉を一緒に混ぜて入れます。そしてユックリ混ぜながら沸騰させて出来上がりです。
3.ニラと魚介のチジミは米粉でもっちり仕上がります。
4.米粉のクッキーはピーナッツ粒入りバターを使用することで、サクサクテクスチャーが気にならず美味しく出来上がります。
5.クレープのフルーツソース巻き
実は柿のペーストを使いましたが、生地にそば茶かそばの実を入れることで、口のテクスチャーを楽しませてくれます。シナモンや胡椒などスパイスで一味味の変化を。
6.初夏には季節の果物が収穫されます。寒天入りフルーツデザートを紹介します。
寒天2gに水やオレンジジュース250g入れて加熱して固めます。1.5㎝角に切って、果物も一口サイズに切って器に盛ります。サイダーやジュースをシロップ代わりに使いハーブを添えると爽やかなデザートに。

(6)終わりに

 日本人は農業基本法ができた1962年には、米を一人当たり年間で118.3㎏食べていましたが、2020年は50.7㎏。これは57%の減少率です。約20年前、九州農政局の農業白書の審議会メンバーをさせていただきました。当時九州大学農学部の教授甲斐諭先生(前中村学園大学学長)が委員長で米粉の消費拡大の推進に力を注ぎました。
 その後も九州農政局や農林水産省の依頼で薬膳科学研究所所長の徳井先生と、米粉消費拡大の講演会や講習会を担当させていただきましたが、やっと米粉が積極的にマスコミで紹介されるようになりました。
 お米の自給率はほぼ100%です。日本人にとってお米は食料安全保障の要。瑞穂の国の私たちは、お米や米粉を積極的に調理に使ってください。新しい美味しさの発見、間違いなしです。

一陽来復の健康学:まだ続く新型コロナウイルス感染症への警戒

 今年の1月から始まった新型コロナウイルス感染症の第6波では、4月上旬までの死亡者数は1万人を超えました。これまでの新型コロナウイルス感染症による全死亡者数は約2万9千人ですが、その3分の1は令和4年になってからの死亡者数となっています。人口100万人当たりの死亡者数をみると、大阪府が546名、兵庫県が392名、北海道が374名、東京都が301名ですが、鳥取県が25名、島根県が16名となっており、地域により大きな差がみられています。死亡者は80代で多く、高齢施設や医療機関で感染し、死亡に至っていると考えられており、これらの施設での感染予防が急務です。
これまでワクチン接種が3回実施されたおかげで、新型コロナウイルス感染症の重症化を防ぐ効果がでていますが、残念ながら死亡される方はワクチンを接種していない方があるようです多。4回目のワクチン接種は、これまでのワクチンの接種ではあまり効果がないことが報告されていますので、今後の対策としては変異株に対する新しいワクチンをできるだけ早く開発し接種できることが望まれます。
 第6波ではオミクロン株のBA.1が主流でしたが、最近ではBA.2が増え、5月にはほとんどこのBA.2になると予想されています。BA.1よりBA.2の方が増加スピードが遅いため、現在小康状態にあるのではないかと思われます。今後、患者が増える恐れがあるため油断はできません。昨年の年末から年始にかけて、感染者の多くは20代でしたが、現在では10代以下も多くなっています。学校が始まり幼稚園・保育園、小中高や大学などでの増加が懸念されます。
 現在世界中で4億人の人が新型コロナウイルス感染症にかかったと報告されています。実際にはその4倍の16億人がかかったと推定されています。これだけ多くの人が感染すると、ウイルスは変異を繰り返し感染力の強い変異株ができる恐れがあるといわれています。まだまだ新型コロナウイルス感染症は油断ができません。アメリカではマスク着用をしなくてもよくなりましたが、日本では1人1人がマスクをしっかりして感染予防に努めることが大事です。

健康一口メモ

  • 健康習慣は高齢者の平均余命を伸ばし、認知症発症も予防する

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  • 穀類の食物繊維は心臓病予防効果がある

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  • 調理や料理を深く学ぶと精神的健康度に良い影響がある

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