2022年 spring No1 家庭で日本型薬膳
はじめに
厳しい冬を乗り越えた花々が一斉に咲きあふれ、太陽も光輝き、コロナ禍においても春は到来しました。日本の四季をゆっくり感じながら、大きく深呼吸してみませんか。
4月といえば「清明」、二十四節気の5番目の節気です。中国や沖縄においても先祖供養するお盆のような行事の日です。2022年は4月5日~4月19日だといわれています。この季節は上海中医薬大学の朱根勝先生によると、清らかな風が吹き、大地に新しい芽吹きを運んできてくれる。つまり、あらゆるものの生命力がみなぎる時であると教えて下さいました。
さー!元気にアクティブに前進していきましょう!!今年度も、ヘルシーで美味しい日本型薬膳を紹介してまいります。
中村学園大学 薬膳科学研究所 徳井、三成
春の主気は「風」。「四季はみな風有り」とか「風は百病の長なり」といわれ、風は体を侵すことが多いとされています。健康な状態であれば、問題はありません。抵抗力が弱くなると、発病させる邪気となり、それが風邪になります。風邪は、上昇や外向きの性質を持っているので、身体の上部、つまり頭、鼻、咽喉などを侵しやくなります。これを抑えるのが発散作用のある食材です。発散作用のある食材に、新鮮な野菜、また旬の魚介類を取り入れることが重要です。
中医学の陰陽五行学説から薬膳を紹介しますと、五行の「木」は、季節は春で、肝が盛んになる時期です。五臓の肝が病むと表裏関係の胆も病むことになります。そして目が充血したり、筋肉、爪に異常が出たりします。顔色が青くなると肝に異常があることがあります。肝を養うのは、酸味のある食材です。酸味の欠乏や過剰は避け、適量摂取することが重要なのです。
陰陽五行学説は、古代における自然発生的な哲学であり、現代の科学から見ると不合理な点があるかと思われます。しかし、全面的に否定するのではなく、有効な部分を受け継ぐことが大切かと信じています。
参考文献 建帛社 薬膳と中医学 共著 徳井、三成など
寿司の発祥の地は東南アジアで、石毛直道氏の「アジアの食事文化」によりますと、酢は使わず、米は食べるのではなく発酵のために使い、魚肉の保存に使っていたということです。東南アジアの山地では稲作とともに魚肉保存の方法が成立していたと言えます。日本での寿司は奈良時代、特に平安時代の延喜式にも記載されており、魚を塩と飯で漬け込んで熟成させた「なれずし」だったようです。
江戸時代になり、握り寿司、巻き寿司、稲荷寿司が登場しました。現在では、回転寿司が一般的になり、コロナ禍においても、持ち帰り寿司、宅配寿司が人気です。世界各国において和食の寿司も浸透していき、イタリアやスペインで中国人や韓国人が経営していたのには驚嘆でした。サンフランシスコではアボガドとサーモン入りのカリフォルニアロールが人気でした。白飯とのりがあればクルクル巻いて召し上がってください。
米飯の美味しさは、味(甘味、うま味)、香り、外観(形、色つや)、テクスチャー(硬軟、粘り)、温度と関わりが深いのです。米飯は独特の味がないのが特徴で、どんな料理にも調和するから、また飽きがないから不思議です。
この白飯に合わせ酢を混ぜますが、白飯は酢の分量を減らした加水量で炊きます。蒸らし時間も普通の半分とします。プロの味は、寿司桶に熱い飯を入れて、合わせ酢を振りかけて、しゃもじで全体に味を浸透させます。やはり、木の寿司桶は最高で、余分な水分を蒸発させてくれます。つやを出すためにあおいで急冷すると、光沢も出てきます。お寿司は白飯とその相手の食材がマッチングしていること、分量もほどよく調和することが重要なのです。
江戸時代より海苔は庶民に手の届かない食品であり、東京湾で養殖されるようになって、浅草和紙の製紙技術を用いて板海苔が生産されるようになりました。本学、短期大学部教授で私の大学の同級生の三堂徳孝先生は柳川がご出身で、現在、柳川観光大使となって福岡県の有明海の海苔の消費拡大に力を注いでいます。東京 日本橋 ロイヤルパークホテル料理長を務めていましたので、世界の料理に海苔を取り入れたメニュー開発に挑戦されています。
海苔には旨味成分のグルタミン酸、イノシン酸、グアニル酸が含まれているため、美味と感じます。タンパク質が乾燥重量で40%と大豆よりも高く、海の大豆とも呼ばれています。このタンパク質が分解してできるペプチドには、血圧を下げる作用があり、また肝臓を守る作用もあります。また、海苔はデリケートで大変だといわれており、生でも食することができますが、海苔は鮮度がすぐ落ちるため基本的に生では流通していません。そのため一般の人が口にすることはほとんどありません。現在、生の海苔の鮮度をいかに保ちながら乾燥海苔にするのかが課題となっております。
何はともあれ、2枚を中表にしてあぶって、おにぎりや巻き寿司を作ると香りの魅力に取りつかれます。
・伝統的巻き寿司
・カリフォルニア巻き寿司(アボガド、サーモン)
・細巻き(たくわん、山芋、胡瓜)
太巻き寿司は、寿司飯1本約200~250g
・かんぴょうは塩もみして水洗いして、10倍の水で下煮して透明になるまで煮る。
・干ししいたけは、20分前後しっかり水を吸収して加熱すると5'-グアニル酸に旨味成分が生成される。
・アボガドは空気にふれると酸化するので、レモン汁をかけておく。
細巻き寿司は、寿司飯1本約80~100g。
相性の良い食材で巻く(山芋、梅肉、胡瓜、シソ、たくわん、胡麻)
貝類のお吸い物は、鰹節のだし汁を使わず手間がはぶける。塩分と貝と昆布から旨味を引き出すため潮汁という。旨味はグルタミン酸、タウリン、アラニン、グリシンである。
田植えの菌床準備をする4月に小雨が多く降り“みの”が必要であったので、この季節の天ぷらに名付けられた。
寒天は、遣唐使の時代にところてんが中国に伝来し、日本で発明された。食物繊維が多く、便通改善に寄与しています。現在、伊那食品工業の粉末寒天は1袋4gで角寒天1本9g分だそうです。煮つめず、固めるだけなので簡単なデザートが出来上がります。まさにSDGsに特化した環境に寄与する食材です。是非挑戦してください。
この2年間あまりの新型コロナウイルス感染症の流行をみますと、第1波は2020年4月、第2波は2020年7月、8月、第3波は2021年1月、第4波は2021年5月、第5波は2021年8月、第6波は2021年2月となっています。つまり、毎年、春季、夏季、冬季に流行がきていることがわかります。現在、オミクロン株の流行が続いていますが、徐々に感染者数は減少傾向にあり、予防接種の効果なのか、季節的な変化なのか、両方なのか、結論を出すのは難しいところです。第5波では流行のピークを過ぎると急激に感染者数は減少していましたが、第6波はピークを過ぎたあとの減少率はゆるやかとなっています。オミクロン株はデルタ株に比べ感染力が強く、デルタ株の流行中ではみられなかった小児の感染者の増加が特徴でした。3回目の予防接種が遅れたため、増加した小児の感染者から予防接種をしていない高齢者に感染し、高齢者の重症化や死亡者数が増加しました。3月22日時点で、高齢者の予防接種率は77.3%と高くなっており、高齢者の重症化は防げるようになりました。しかし、これまで流行していたオミクロンのBA.1株からより感染力の強いBA.2株の流行に移行しつつあり、第7波が来ることが懸念されています。4月は新学期の季節です。新社会人にとっては新しい人生のスタートです。このため、入学式や歓迎会など、人が集まる機会が多くなって感染リスクが高くなる可能性が指摘されています。今一度、油断なく、マスク着用、換気など自分でできる感染症対策を徹底することが大事です。
参考文献
1.特設サイト新型コロナウイルス
https://www3.nhk.or.jp/news/special/coronavirus/medical/detail/detail_225.html
2.日本小児科学会
http://www.jpeds.or.jp/modules/activity/index.php?content_id=404
3.チャートで見る日本の接種状況
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/coronavirus-japan-vaccine-status/