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2020年6月 夏の薬膳 初夏の薬味を使った薬膳

目からウロコの調理学

夏=季節の薬味を使った薬膳

“命を守るSTAY HOME”

政府は緊急事態宣言を解除しましたが、まだまだ危機管理は不可欠です。
「美味しい料理を」、「食欲が出る料理を」食べたい!教えてくれ!と研究室にたくさん電話が入りました。今月は夏の薬味を使った薬膳を紹介します。

■薬味とは

薬と味が合わさってつくられた薬味は、料理の味を引き立てる事、料理に薬効成分をプラスしてくれる事など、和食には欠かす事ができない食材です。中国料理、西洋料理、韓国料理ではヤンニョム(薬念)として使われています。 薬味は料理に少量添えると

  • ・薬味の食材の香りで食欲をそそる効果。
  • ・薬味の持つ食材の色で料理の彩りをアップする。
  • ・薬味の食材は、料理の味を引き締め深みを出す。
  • ・薬味と食材で味の相乗効果で風味が増す。
  • ・薬味の香りと成分で素材の臭みを抑制。
  • ・薬味の香りと成分で食中毒の予防の効果。

このように薬味を料理に使うと、料理のアクセントとして美味しいだけでなく、様々な効能・効果が健康的に期待できるのです。これから是非、日常の健康料理に取り入れてください。

■主な薬味の食材

  • 1.柑橘類:柚子・レモン・カボス・スダチ・シークワーサー
  • 2.野菜・ハーブ:葱・生姜・茗荷・三つ葉・木の芽・山葵・紫蘇・ニンニク・セロリー・ニラ・大根・セリ・タデ・クレソン・パセリ・ミント・菊の花
  • 3.海藻類:海苔・アオノリ・アオサ・アカサ
  • 4.種実類:胡麻・ピーナッツ・クルミ・松の実
  • 5.果実類:梅干し・クワの実
  • 6.香辛料:唐辛子・山椒の粉・マスタード・シナモン

中村学園大学が2017年に薬膳EXPOを開催し、その際に薬膳料理を一生懸命考えました。
今回はその料理、健康モデル食“日本型薬膳”より紹介します。
夏の旬の食材や薬味を使った、食べて美味しいヘルシーメニューなのです。作るのは簡単で、見栄えは良く、食材の価格は安く、家庭で作れます。しかしそれらの料理は、10年程夏と冬に各1週間通った京都大和学園の和食の料理、表千家の茶懐石料理を学ぶために名古屋の志ら玉の厨房で10日間指導いただいた時の料理などから、美味しさの隠れ技も入れています。お楽しみください。
献立は、主食;生姜と梅の香り飯、主菜;鯛の元気焼き、副菜;鶏肉と五菜のマリネ、副副菜;なすのぬか漬け、汁;山薬とおくらのとろろ汁、デザート;腸いいデザートです。

■中医学を基本とした日本型薬膳とは

中村学園大学薬膳科学研究所が推奨している日本型薬膳について以下に紹介させていただきます。日本型薬膳とは中医学基礎理論に基づき先人の知恵と経験から生まれた「食療中薬を使用した薬膳」に現代医学や栄養学の成果を取り入れたものです。季節ごとにその土地の気候・風土にあった食材や個人の体質に適した食材を選び、色・香り・形・味のすべてに満足できるように配合・調理された食事です。日本型薬膳は食物繊維含有量が多く、毎日食べて美味しく、健康増進に貢献できるように考慮したテーラーメイド食でもあります。まさに免疫を下げない料理でもあります。その食事の評価には、排便と腸内細菌叢を取り入れています。その6つの特徴を下記に示します。

1.日本のお膳文化で、一汁三菜を基本とする:室町時代に本膳料理で完成された日本料理の一汁三菜のお膳文化を基本として飯・汁・主菜・副菜・副副菜の5つがそろうと1日の約1/3のエネルギーが摂取できる。ごはんと味噌汁は食物繊維が豊富で、特に椀種、つま、吸い口が揃った汁物は、食物繊維を多く摂取できる。

2.旬の食材を使用:旬のものは手に入りやすく、安全で栄養的にも優れているうえ、味や香りがあるので薄味で美味しく調理できる。また食料自給率を高めることになる。

3.おいしさの本質である、五つの味・五つの色・五つの調理法を利用:一つの献立に五味・五色・五法を取り入れて五感で楽しみながら健康増進を図る。酸味をうまく利用すると薄味でも美味しくなり、旨味の利用によって塩分カットができる。
 五味:甘味・酸味・塩味・苦味・旨味
 五色:黒(紫)・緑・黄・赤・白
 五法:生物・煮物・焼物・蒸し物・揚げ物

4.中医学基礎理論の薬膳の考え方を導入:季節や体調にあった食事をするために中医学基礎理論を利用して、薬膳食材を選び配合して、美味しく調理する。
 春:「発散作用」のある薄荷・生姜・葱など
 夏:「清熱作用」のある西瓜・胡瓜・トマトなど
 秋:「潤肺作用」のある梨・柿・山芋など
 冬:「温熱作用」のある胡桃・陳皮・胡椒など

5.イタリアの地中海式ダイエットと修道院の食事の考え方の導入:南イタリアの1960年頃の地産地消の地中海料理は健康効果が実証されている。イタリアの修道院の食事は健康増進、疾病予防の効果がなされ、無駄がなく、個人にあった食事である。

6.食事を排便で評価:規則正しい排便と腸内細菌叢で食事を評価:腸内環境の改善は、有害菌の増殖抑制や便性改善などにつながり、ヒトの健康維持・増進に大きく関与する。中医学でも、排便・排尿の障害が病気の原因として重視され、排泄をスムーズにして体のバランスを整えることは健康増進につながり、特に野菜類が大切だと説いています。

目からウロコの健康学:自粛中の健康管理

 新型コロナウイルスの感染流行によって、外出自粛でステイホームという言葉がうまれました。現代の生活はさまざまな面で便利となり、座ったまま、○○に質問すると調べてくれたり、○○にお願いすると電源を入れてくれたりして、家庭内であまり動く必要のない生活様式になりつつあります。しかし、便利さと引き換えに私達は大切な健康を失っている可能性があります。新型コロナウイルスの感染流行で浮かび上がった現代人の座位行動と健康との関連をご紹介したいと思います。座位行動とは、簡単に言えば起きている間、ほとんど動いていない状態を指します。寝そべっているばかりでなく、椅子に座って仕事をしているときなどもこの座位行動の範囲です。現代人の1日の座位時間は1日の約半分を占めるといわれています。では座位行動は身体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。筋肉を動かさないと、糖代謝機能の悪化、血流の低下、血管障害などが起こりやすいといわれています。実際に座位行動と死亡率の関連を検討した疫学研究をみていきますと、1日の座位時間が4時間未満の人の死亡率に比べ、4~8時間/日未満の人は2%増加、8~11時間/日未満の人は15%増加、11時間/日以上の人は40%増加すると報告されています。私は運動しているから大丈夫と思われている方がおられるでしょうが、ここに1つ大きな落とし穴があります。先ほどの死亡率の研究で、1週間に5時間以上運動している人でも、1日の座位時間が11時間以上の人は4時間未満の人と比べて、なんと死亡率が40%増加すると報告されています。つまり、ある程度運動していても、座位時間が長いと健康によくないということです。また別の研究では、7時間ずっと座っている人に比べて、2時間座った後、20分ごとに2分間の歩行を行った人は、食後血糖がより低下しました。以上から自粛中の健康管理のコツは、よく運動することより(運動すること自体は継続できれば大変いいことですが)、できるだけ長時間の座位行動を少なくすることです。つまり、家事などでちょこちょこ動いていると、座位行動の悪影響を減らすことができます(下の「ちょこちょこ動きましょう」も参照)。コロナ対策で家でじっとしていても、こまめに動く習慣を是非身につけてください。

参考文献:①日健教誌,2013;21(2):142-153、②Arch Intern Med. 2012;172(6):494-500
     ③Lancet. 2016 Sep 24;388(10051):1302-10.

健康一口メモ

  • ちょこちょこ動きましょう

     新型コロナウイルスの感染流行で多くの人が外出自粛をされました。ずっと家にいるようなことは多くの人はあまり経験がないと思います。在宅を続けると、運動不足はメンタル面でもいろいろ心配になりますが、感染防止とともに、心身の健康管理をどのようにしていけばよいのでしょうか。この研究は米国の20~35歳の健康な若年成人(n=423)を対象に、10日間に渡りエネルギー消費の状況を自動的に測定して、肥満度やストレスや気分の変化を調べたものです。その結果は興味深いものでした。長時間座っているかわりに、少し寝ることで、ストレスの低下、気分の改善、体脂肪の低下がみられました。長時間座っているかわりに、中等度から活発な身体活動をすることで、より体脂肪は低くなりました。また長時間座っているかわりに、ちょっと動くことでも、気分の改善や体脂肪の低下がみられました。この「ちょっと動く」とは電話で話しながら室内を歩いたり、夕食の準備で立ったりすることでもよいということで、何も数千歩も歩いたり、ジョギングなどをしないといけないということではありません。寝ることでいい影響があるのは、現代人の多くは夜遅くまでテレビを見ながら起きている習慣があったりするため、早寝早起きにより心身の疲れを癒し、生活リズムがよくなるからではと考えられています。もちろん、1時間歩いたり、ジョギングすることはいいことですが、肝腎なことは継続できる習慣を身に着けることです。そういう意味では、家事などでちょこちょこ動くことは簡単にだれでもできそうなことではないでしょうか。とにかく、ずっと座っておらず、身体を少しでも動かすことが大事ということです。

    Meyer et al / Am J Prev Med 2020;1−9

  • 新型コロナウイルス情報にはご用心を

     現代はインターネット時代、フェイスブックやツイッター、インスタグラム、YouTubeなど、社会的ネットワークの構築の出来るサービスやウェブサイトがあふれています。今回の新型コロナウイルスの感染情報がこれらの媒体を通じて世界中に発信されています。正しい情報が発信されるのであれば、公衆衛生上、強力な武器にもなると思いますが、間違った情報を流せば逆効果にもなります。そのためどこまで正しい情報が発信されているのかを検証したカナダからの報告です。対象としたのは、YouTubeという動画です。2020年3月21日に「コロナウイルス」と「COVID-19」というキーワードで検索を行い、その結果の69本の動画の信頼性を分析しました(ただし英語の動画だけを選定)。69本の動画の再生回数は、合計で2億5780万4146回でした(ざっと世界の100人に1人は見たのでないでしょうか)。69本中、50本の動画(72.5%)には、事実に基づく情報が含まれていましたが、4本に1本以上(19本、27.5%)は事実ではない情報が含まれており、再生回数は合計6千2百万回でした。誤解を招く19本の動画のうち、約3分の1はエンターテイメントニュース(娯楽ニュース)でした。一方、専門機関や政府機関の動画は、他のどの動画に比べても正確性、使いやすさ、品質の点で高く評価できましたが、残念ながら視聴数は決して多くありませんでした。感染流行を防止するには、正しい情報を発信することが重要ですが、現在発信されている情報の25%は、不正確な情報やデマなどの情報が混じっており、強力な発信媒体であるYouTubeを有効利用するには、タイムリーで正確な情報を提供し、誤った情報の拡散は最小限に抑えるようにする仕組みが大切です。日本でもテレビで自称専門家という人がさまざまなコメントをしていますが、今回新型コロナウイルスに関する客観的なデータは少なく、断定的なコメントには注意が必要だと思います。大学や研究機関など専門的な組織からの情報をまずみることが大事です。

    BMJ Global Health 2020;5:e002604.doi:10.1136/

  • 飽和脂肪は集中力を低下させる

     乳製品、肉などの動物性脂肪や、ココナッツ油、やし油などの油脂に多く含まれているのが飽和脂肪です。この飽和脂肪を多く摂取すると循環器系の疾患のリスクを高めることが指摘されています。さらに最近では認知機能にも影響するという報告があります。しかし、摂取してすぐの認知機能への影響はよくわかっていないため、その関連を検討した米国の報告です。対象者は51人の女性です。対象者を2つのグループに分けて、1つは高飽和脂肪食を摂取したグループ(A群)、もう1つは高オレイン酸ひまわり油食(飽和脂肪は少なく、不飽和脂肪が多い)のグループ(B群)です。食事の1時間前に採血と集中力検査を、食事の5時間後に2回目の集中力検査を実施しました。その後、1週間から4週間後には、今度はA群、B群の摂る食事を入れ替えて食べてもらい、同じように検査しました。その結果、高飽和脂肪食を摂取した後の方が、高オレイン酸-ヒマワリ-油食を摂取した後よりも、集中力がより低下しました。さらに興味深いことに、リーキーガットの人はより集中力が低下しやすいこともわかりました。このリーキーガット(漏れる腸の意味)とは、元来、腸は腸内細菌などが体内へ入ることを防ぐために腸管の粘膜にはバリア機能がありますが、このバリア機能が低下して、本来腸壁を通過しない未消化物や老廃物、微生物成分などが腸壁を通過し、血液中などに入る混む状態をいいます。リーキーガットが起こると体のさまざまな部位で炎症が引き起こされ自己免疫疾患やアレルギー、感染症などの原因になると考えられています。リーキーガットの原因の1つとして日頃から飽和脂肪の過剰摂取があることが指摘されています。この研究から、飽和脂肪の1回の過剰摂取でも食事後の集中力を低下させたり、リーキーガットの状態がある人では、飽和脂肪でも不飽和脂肪でも、脂肪の過剰摂取によって集中力が落ちることが示唆されました。日頃から、腸をいたわり、腸内環境によい低脂肪、高食物繊維の食事や発酵食品などをたべることが大事でしょう。

    The American Journal of Clinical Nutrition, nqaa085, https://doi.org/10.1093/ajcn/nqaa085