ペルーの国土は日本の約3.4倍あり、赤道直下から南緯18度にわたっている。
ペルーは年間雨の降らない乾燥した砂漠、標高6,000mの山々が連なるアンデスの高地、アマゾン河流域の熱帯雨林地域と変化に富んだ風土と気候が存在している。
そのため、ペルーは沿岸地域、山岳地域、熱帯雨林の3つの地域に分けられ、それぞれに異なった食文化がある。
コスタという沿岸地域では、多種類のジャガイモ、伝統穀物キヌア、キウイチャなど世界中の野菜や果物が栽培され、収穫されている。一日の食事では昼食がメインでスープ、主菜、デザートが食べられている。調味料は塩、砂糖、酢、味噌、醤油、胡麻油、油などを使用して辛味、酸味、香りを大事にしてニンニク、トウガラシ、アンデスのハーブは不可欠である。漁業が盛んなペルーの前菜にセビチェがある。エビ、タコ、イカ、白身魚をそぎ切りにして軽く塩でしめて、ライムやレモン汁を入れ、タマネギ、アヒ(トウガラシ)、香菜を入れて混ぜた簡単な料理である。その魚介類の頭や骨でだし汁をとってペルー潮汁、チリカは代表的な郷土のスープである。主菜で代表的なものは、フライドポテトにアヒ、それに千切りした牛肉、赤タマネギ、トマトなどを炒め、醤油で味付けしたロモ・サルタードがあるが、日本人好みの一品である。
また、アンデス高地の山岳地帯地域に住む人々の主食はジャガイモが中心で、食卓は芋づくしである。また、トウモロコシを発芽させてモヤシを作り、それを煮て乾燥させた後発酵させたチチャ酒を作っているが、これはインカ以来の伝統的な製造方法である。
また、牛の心臓をスパイス入りの酢に一晩漬けこみ味をしっかりと染み込ませ、トウガラシベースのソースにつけながらじっくりと焼くアンティクーチョスやジャガイモにトウガラシを混ぜたチーズを使い、濃厚なソースをかけたパパ・ア・ラ・ワンカイナなどの郷土料理もある。
アマゾン地域での第1の作物で主食となるのはユカである。ユカは蒸したり、スープに入れて食べる。また、酒の原料にもなる。「ユカする」が食事するの意味だといわれている。そして主菜には地域に生息する動物バクの肉・ペッカリー肉を使い、魚では淡水魚を焼く、蒸す、スープにとシンプルに調理された料理が食卓に出されている。
世界でも話題のペルー料理に是非挑戦してみて下さい。なお、鹿児島県指宿市にある花と香りのガーデン「開聞山麓香料園」の園長である宮崎泰先生によると、ペルーでは子供たちの離乳食としてパッションフルーツがよく用いられているとのことです。
『料理人ガストン・アクリオ 美食を超えたおいしい革命』という映画をご存知の方もおられるでしょう。料理で国を変えたといわれるペルー生まれの世界的に有名な料理人です。ペルーは九州からの移民の人が多く、九州とは馴染みの深い国です。民族はメスティーソ、インディヘナ(先住民)、ヨーロッパ系ペルー人15%、アフリカ系ペルー人、中国系ペルー人と日系ペルー人と多彩な構成で、さまざまな食文化の融合が特徴あるペルー食文化を形作っているといえます。さらに、海抜ゼローメートルから数千メートルのアンデス山脈まで自然豊かな土地からさまざまな食材がとれます。現在世界中に広まっているトマト、ジャガイモ、カボチャ、唐辛子などはアンデス山脈が育んだものです。ペルー料理といえば魚介類のマリネであるセビーチェが有名で、世界一の郷土料理といわれています。ペルー最高峰のワスカランの山麓では、タルウィという豆を使った山のセビーチェがあります。タルウィは豊富な食物繊維や必須アミノ酸のひとつであるリジンが含まれておりスーパーフードして注目されています。またキヌアというカルシウム、鉄、食物繊維が豊富な雑穀があり、優れた栄養特性を持ち日本でも商品として発売されています。鹿児島県指宿市に日本で最初に本格的なハーブを栽培した開聞山麓香料園があります。ここの園長である宮崎泰氏は東京大学アンデス調査団員の1人としてペルーへ渡り、サン・マルコス大学文化人類学教室で考古学を研究された方です。宮崎氏によるとペルーにはジャガイモが1000種類以上あり、離乳食用のジャガイモ、煮物用のジャガイモなど用途別に分かれているとのこと。断面が赤や黄色のジャガイモはアントシアニンやカロテノイドの抗酸化物質が豊富で、今では日本でも食べられるようになりました。
朝食のシリアルには一般的に牛乳をかけて食べることが多いと思いますが、牛乳の蛋白質の濃度によって食後の血糖値が異なるというカナダの研究です。健康な男女32名(平均年齢23.3歳)を対象にシリアルにかけるものとして、①ホエイ(乳から乳脂肪分やカゼインなどを除いた水溶液で蛋白質含有量4.6g)、②低蛋白質牛乳(2種類、蛋白質含有量12.4g)、③高蛋白質牛乳(2種類、蛋白質含有量27.9g)の計5つのものを準備して、どれをかけるか対象者が分からないようにして、朝食を食べてもらい、その後の血糖を測定しました。また昼食はピザを食べてもらい、食後の血糖を測定しました。その結果、①に比べ、③をかけた人の血糖は有意に低い値を示しました。また昼食後の血糖の上昇も③のグループが一番低い値でした。朝食に高蛋白質を取ると食後の血糖の上昇を昼食後まで抑える効果があるようです。
Journal of Dairy Science Vol. 101:8688–8701 No. 10, 2018
味覚異常が最近増えていますが、その原因の1つが亜鉛不足です。亜鉛はまた細胞中の蛋白質合成には必要なミネラルでもあります。最近の研究によると亜鉛はワイン、コーヒー、茶、チョコレートなどの食品に含まれるポリフェノールと共同で活性酸素の1つであるスーパーオキシドの障害から守る作用があることがわかりました。スーパーオキシドは老化や炎症、がんなどに関与していると考えられている活性酸素です。興味深いのは、ポリフェノールだけではスーパーオキシドの障害を防ぐことはできませんが、亜鉛があるとスーパーオキシドの障害に対して保護作用がでてくるのです。亜鉛を多く含む食品は、牡蠣が有名ですが、その他ひじき、きな粉、あずき、納豆、カシューナッツ、アーモンド、ゴマ、玄米、そば粉、牛や豚のレバーなどです。やはり日常の食生活ではさまざまな食品の組み合わせを取ることが大事になります。
Nature Chemistryvolume 10, pages1207–1212(2018)
砂糖(ショ糖)の摂りすぎは肥満の原因となりますが、甘い誘惑には誰しも負けます。しかし、昼に甘い物を食べるとその悪影響が少ないという日本で行われた動物実験の報告です。ラットを用いてラットが活動する時間(夜に活動するが、人間なら昼に当たる時間帯)と食事を与える時間帯の組み合わせを4つ設定しました。①高ショ糖食・「夜間」のみ、②高でんぷん食・「夜間」のみ、③高ショ糖食・24時間自由摂取、④高でんぷん食・24時間自由摂取の4つです。4週間後の4群の体重・血液と肝臓の脂質について調べたところ、食事量は同じにも関わらず、①群の血中脂質と肝臓脂肪は、③の24時間自由摂取群よりも有意に低い結果でした。人間に当てはめると、同じ量の甘い物を食べる場合、昼間だけ甘い物を食べる方が1日甘い物を食べる場合に比べ、肥満の原因が抑えられるという結果でした。
PLOS ONE | https://doi.org/10.1371/journal.pone.0201261 August 15, 2018