韓国料理は、李王朝が規範とした儒教に基づき宮廷料理から発達した。地方の特産物や郷土料理の優れたものが取り入れられ、料理の幅が広がったといわれる。そして、“食は五福の一つ”といわれている。
料理のベースになる食材は、肉類では牛や豚の内臓や血、足、それに野菜類、山菜から木の実まで、ありとあらゆる山海の恵みを食材に使い、日本で薬用とみられている食材が巧みに料理の中に使用され、韓国のエネルギー源になっている。
伝統の味キムチはベチュキムチ、カクトキ、ナムルの大きく3つに分類され、代表的料理はプルコギ、ビビムバムなどがある。
宮廷料理が韓国料理の粋であるのは、各地方の食材が優れた調理技術を持つ厨房尚官(調理担当の女官)と待令塾手(男性料理人)の手により調理され、最も整った形で伝承されたからである。基本の献立は、十二チョブ飯床と呼ばれ一度に全部の料理が配膳され、調理法と材料が重複しないのが原則である。小さい器のチョブに12種類の材料が盛られ、2種類の飯(白飯・赤飯)、3種類のキムチ、2種類の汁物、3種類の醤そして1品の煮物が配置された。
料理は、五方色の青、白、赤、黒、黄を調和させて調理されている。中医学基礎理論の陰陽五行学説が基本にあるため、青は酸味、白は甘味、赤は苦味、黒は辛味、黄色は鹹味と五色と五味が調和されている。料理に彩りを添える飾り(コミョン)は、味、色、形にも気配りして自然の五色説に基づき作られ、食べる人への配慮と知恵が凝縮されている。赤色は唐辛子や大棗、青色は芹や葱、黒色は椎茸や木耳、白色は卵白の卵焼きや栗、黄色は卵黄の錦糸卵を使用するなどのような配慮がされている。
合わせ調味料のことを「薬念(ヤンニョム)」といい、料理の味を引き立てるために使われている。薬念は薬のように体に役立つことを願って材料を合わせて作り、基本の味は鹹味、甘味、酸味、辛味、苦味の五味で、料理にこれらの調味料を混ぜ合わせて使用する。薬念のベースには塩、醤油、唐辛子味噌、味噌、酢、砂糖などが使われ、香辛料・薬味の働きをする生姜、芥子、胡椒、唐辛子、胡麻油、大豆油、胡麻、葱、大蒜、山椒などが使われる。味付けに使う醤は、塩辛い味の醤油と少し固めの味噌があり、醤の真醤は濃く甘い醤油、清醤は味の薄い醤油、中醤は清醤と真醤の中間の醤油があり、色と塩分濃度を考慮して料理に使用されている。
参考資料 日本調理科学会誌 Vol.46, No2 139~141(2013)
韓国宮廷料理と薬膳 三成由美
韓国は日本と同じように歴史的に中国文化の影響を受けてきました。食文化についてみると、薬膳の伝統は本場中国や日本以上に残っている印象を受けます。韓国といえば、高麗人参が特に有名ですが、生命エネルギーの源である「気」を補う作用があり、疲労回復の生薬として重宝されています。十全大補湯という漢方薬には人参が入っていますが、「気」や「血」を補う他のさまざまな生薬も配合されており、疲労倦怠感、貧血、皮膚の乾燥、食欲不振、寝汗、手足の冷えなどの不調があるときに処方されるありがたい薬です。ソウル、釜山、仁川に次いで韓国で4番目の人口を誇る韓国南部の都市大邱では毎年5月に漢方祭りが開催され、大きなやかんで十全大補湯が煎じられ、祭りに参加した市民に配られています。驚くことに、喫茶店のメニューにこの十全大補湯が用意されており、仕事で疲れたビジネスマンを癒してくれる飲み物となっています。韓国には夏の身近な飲み物としてスジョンガ(水正果)があります。桂皮、生姜、黒糖、松の実、干し柿などが入っており、冷たくして飲むと夏の暑さを忘れてしまう清涼感のある飲み物です。このスジョンガが薬膳として優れているところは、冷たい飲料にも関わらず、桂皮、生姜で胃腸を冷やしすぎないようにしているところです。胃腸の冷えは夏バテの原因となります。この夏はスジョンガ作りにトライして、夏バテを吹き飛ばしましょう。
運動不足になると、脳の神経にも影響するというイタリアの動物実験の報告です。実験は、マウスの前あしは自由に、後あしは4週間拘束しました。食事などは実験前と変わらないように継続して行いました。その結果、後あしを拘束したグループの脳の神経幹細胞は、両あしとも自由なグループに比べ、70%も減少しました。毎日あしに体重をかけ、筋肉を使うことは、健康な神経細胞を生むために重要であるということがわかりました。脳から足を動かす指令がでているだけでなく、足を動かすことで脳の神経細胞の産生に必要な刺激となっているため、できるだけ足は動かすことが大事なようです。
Front. Neurosci. 12:336. doi: 10.3389/fnins.2018.00336
歩行ペースと死亡リスクの関連を約5万人を対象に調べたイギリスの報告です。歩行ペースは実際に測定した値ではなく、自己申告のデータを使いました。ゆっくりと歩く人に比べ、平均的な速さで歩く人の全死亡リスクは20%減少、速足の人では24%低いことがわかりました。また、心臓病の死亡リスクにおいても、歩行がゆっくりの人に比べて平均的な人は21%、速足の人は24%もリスクが低くなりました。高齢者ではさらに歩行ペースと心臓病死亡リスクの関連が強くみられ、60歳以上では歩行がゆっくりの人に比べて平均的なペースの人で46%低下、速足の人は53%低下しました。速足はだいたい時速5-7kmで、わずかに息を切らす程度か、汗ばむ程度の歩行ペースです。健康づくりのために毎日歩くことは大事ですが、今より少しだけペースを上げると、もっと健康づくりのための運動になります。
Br J Sports Med 2018;52:761–768.
前立腺、肺、大腸、卵巣がん検診の参加高齢者約10万人を平均8.9年追跡調査したデータに基づいて、飲酒量と死亡リスクを検討したイギリスの報告です。データ解析の結果、全死因による死亡リスクと飲酒量の間には、最もリスクが低くなる飲酒量は、週1-3ドリンク(日本酒で3合、ビール中ビンで1.5本程度)でした。まったくもしくはほとんど飲まない人は、1日2ドリンク以上の人と同じように死亡リスクが高まりました。これまでも、飲酒量と死亡の関連は、適量飲むと健康によいという報告があり、今回も同様な結果でした。日本では、男女とも1日ビール中ビン1本、日本酒1合を適度な飲酒としています。これから冷えたビールの美味しい季節となりましたが、日本酒2合のアルコールを代謝するのに、約8時間かかりますので、飲みすぎた次の日は肝臓をいたわってください。
PLOS https://doi.org/10.1371/journal.pmed.1002585