わが国でいわれる西洋料理は、一般に欧米各国の料理をさし、その代表的かつ中心的なものはフランス料理である。
フランス料理は、古代ギリシャ、ローマで発達した料理がもとになり、ルイ王朝時代に王室の保護を受けて発達したもので、芸術的で美味な料理である。料理名に城、人名、地名などが多く用いられるのも特徴の1つといえる。国土に産する豊かな産物と美味なものをあくまで追求する熱意をもって、楽しみながら料理し、かつ味わうという民族意識がフランス料理を世界的なものにしたのである。
特徴としては、主材料に獣鳥肉が多く、次に乳、乳製品などが多く用いられる。食品の味つけは、持ち味を生かすことに重点をおき、調味料としてはおもに食塩が巧みに用いられる。
また、食品の風味を引き立てるために香辛料や酒類を多く使い、それぞれの料理に合ったソースを添えて供する。また食事中にもその料理に調和した種々の酒類、ことにフランスでは必ずワインが料理とともに供される。
動物性の飽和脂肪の摂取量が多いと心臓病による死亡率が高いことはよく知られています。フランスは飽和脂肪(乳脂肪)の摂取量が高く、オランダ、ドイツ、オーストリア、イギリス、ベルギーとほぼ同じレベルなのですが、心臓病の死亡率をみると不思議なことにこれらの国よりもずっと低いことが報告されています(図参照)。この矛盾した現象をフレンチパラドックス(フランスの矛盾)といいます。ではなぜフランスだけが低いのでしょうか。
日本家政学会誌Vol. 51 No. 4 339-343 (2000)
脂肪をたくさん取ってもその悪影響を打ち消すような食品をフランス人は取っているのでしょうか。脂肪を多く摂取することで血清コレステロールが高くなり動脈硬化が進行し心臓病につながります。健康診断のときに、悪玉コレステロールLDLや善玉コレステロールHDLという検査項目を聞かれたことがあると思います。
実は動脈硬化はこのLDLが酸化変性することで起こりやすくなります。そこで、LDLが酸化しないようにすれば動脈硬化を防ぐことができます。フランス人はLDLの酸化を防ぐ食品を取っていました。それが赤ワインです。赤ワインにはレスベラトロールという成分が含まれており、この成分が酸化を防ぐ強い機能性を有します。そんなに健康によい成分があるのなら、たくさん赤ワインを飲めばどうかと思う人もいるかもしれません。実はフランスは心臓病死亡率は低い国ですが、肝臓病死亡率は高い国です。ワインはあくまでもアルコールですから飲みすぎは健康によくありません。1日ワイングラス1杯~2杯程度が適量でしょう。どの国でも「酒は百薬の長」、ただし適量で。
食事と脳の大きさを検討したオランドの研究です。認知症や脳梗塞がない4213名の高齢者を対象に食事調査を行い、食事摂取基準を参考に14食品群(野菜類、果物類、全粒粉製品、種実類、ナッツ類、魚類、乳製品、魚類、茶、総脂質のうち不飽和油脂、赤肉・加工肉、砂糖入り飲料、アルコール、塩)について評価を行い、各自の食事内容に点数をつけました。
またMRI(磁気共鳴画像)で脳を検査しました。その結果、食事内容の点数が良いと、脳容積、灰白質容積、白質容積、海馬容積が大きい傾向にありました。特に野菜、果物、全粒粉、ナッツ、乳製品、魚類の摂取量が多く、砂糖入り飲料の摂取量が少ない人の方が、大きな脳容積を示しました。脳容積がより大きい高齢者は、より優れた認知能力を有することが示唆されているため、野菜、果物、全粒粉、ナッツ、乳製品、魚類の摂取は認知能力維持に重要な食品といえます。
Neurology May 16, 2018
これも脳に関する話です。脳の灰白質(脳の神経細胞の細胞体が集まっている場所)には、筋肉の動きを制御し、知覚、思考、感情、記憶と会話などを担当する領域が含まれており、灰白質の大きさは脳の健康状態を表しているといわれています。認知症や認知機能障害のない262名の高齢者を対象に、どのくらい体を動かしているかを調べるために加速度計の装置を7-10日間連続して着用してもらいました。またMRI(磁気共鳴画像)で脳の検査を行い脳の灰白質の大きさを測定しました。その結果、犬の散歩、庭いじり、家の掃除など日常的な身体活動量が多いと脳の灰白質が大きいことがわかりました。脳の健康維持のためには、ちょっとした運動も効果があるようです。
長生きするためにはいろいろ健康的な習慣を実行しないと無理と思われるかもしれませんが、寿命には5つの健康習慣が重要だという米国の報告です。5つの健康習慣とは、
①タバコは吸わない、②肥満指数(BMI=体重kg/(身長m X身長m))が18.5-24.9である(標準体重)、③1日30分以上中・高強度の運動をする、④適度に飲酒する(1日女性1合弱程度、男性1合から1.5合程度)、⑤高品質の食事をする(野菜、果物、精製していない穀類、豆類などを多く摂取、飽和脂肪を少なく摂取する食事)です。
大規模な追跡研究データと米国国民健康・栄養調査データを用いて、5つの健康習慣と平均寿命の関連を検討しましました。その結果、5つの健康習慣がすべていい人は50歳の時点で、女性なら平均余命は43.1年、男性なら37.6年で、これは5つの健康習慣がすべて悪い人に比べて女性で14.0年、男性で12.2年長生きすることを意味していました。また5つの健康習慣がすべていい人はすべて悪い人に比べて、死亡するリスクが74%低く、心臓病によって死亡するリスクは82%、がんによって死亡するリスクは65%低い結果でした。5つの習慣をすべて健康的にすることは難しいかもしれませんが、健康習慣が多いほど長寿であることがわかっているため、改善しやすい習慣から取り組むといいのではないかと思われます。
Circulation. 2018;137