中国料理は、四千年の長い歴史と豊かな文化を背景に伝統を持つ中国で発達したものだけに、調理の技術と味の妙味で世界に知られている。ことに、古来から食に対する人々の関心は並々ならないものがあり、それが食生活の真髄の追求となり、何千年ものあいだに大成されたものである。材料の種類の豊富さや調理法の巧みさは他に類を見ない特徴の1つといえよう。中国料理の特徴を要約すると次のとおりである。
食物と薬物はその源が1つであり、食物は健康を保つ薬としてとらえ、材料の性質や味の組み合わせをバランスよくとることを重視している。
大別すると黄河流域の北方系、揚子江上流の四川系、揚子江下流の江浙系、それに珠江流域の南方系の4つに分けられる。
たとえば、鴨なら肉を使うだけでなく、皮、手羽先、鶏冠、脚も料理の材料として用い、栄養的にも、経済的にもすぐれた料理に仕上げている。また、乾燥した材料が多く用いられ、 燕窝(ツバメの巣)、魚翅(フカヒレ)などの高級な特殊材料から一般材料にいたるまで、生のものを使用する以上にそのものの持ち味を生かしている。
中国料理では、油を使わない料理はないといってもよいほどによく使い、その用いかたはたいへん合理的で油っぽさを感じさせないように用い、独特の手法によって材料の風味をそこなわず、栄養分の損失も少ない。
料理は1つの器に盛りつけて出され、各自が取り分けて食べるので、接待する側も人数にこだわらずに、もし客が1人ふえたとしても食器を1人分ふやすだけですむ。
とくに多くの器具を用いなくとも、1つの中華鍋、まな板、包丁、鉄べら、せいろ、めん棒などがあれば、ほとんどの料理をすることができ、合理性をもっている。食器も大皿盛で、各自が取り分けるので、数も少なくてすむ。
春の主気は「風」であり、「風は百病の長なり」と言われ、健康な状態であれば問題はないが、抵抗力が弱くなると人間を発病させる邪気となり、それが風邪になる。
「風邪」は、上昇や外向きの性質があり、体の上部、つまり頭、鼻、咽喉などを侵すと言われている。
これを抑えるには発汗作用のある、寒涼性で辛味の薄荷(ハッカ)や、温熱性で辛味のニラ、ショウガ、ネギ、それにクコの実、菊花、チンゲンサイなどが効果的である。
春は万物の芽吹きと成長の季節であるため、菜の花、アスパラガス、芹、ワケギ、グリンピース、タケノコなど、また旬の魚介類である白魚、鯛、ハマグリなどを取り入れて調理することが望ましい。
中国といえば薬膳を思い浮かべますが、薬膳とは「中医学の理論をベースに、気候・風土、季節、個人の体質に合った食材を選び、それを組み合わせ、色、香り、味に満足できる食事」と私たちは定義しています。中国は国土が広く、乾燥気候、高温多湿気候、寒冷気候など多様な気候条件がみられ、医療が発達していなかった2000年前はこれらの気候にいかに適応していくかが健康を守る要となりました。たとえば、皆様ご存知の麻婆豆腐。四川省の省都である成都の郷土料理です。陳というおばさんが作ったということで陳麻婆豆腐と呼ばれています。この料理に使われている香辛料が花椒です。さわやかな香りと舌がしびれるような刺激的な辛みが特徴の山椒の仲間です。「麻」はこのしびれるような辛さを指す言葉とする説があります。日本の山椒とは近縁種です。成都という都市は、太陽がでると犬が吠えるといわれるくらい、いつもどんより曇っている気候で湿度が高い土地柄です。中医学では湿度が高いと体内に湿がたまりやすく、いろいろな体調不良を招きやすくなると考えられています。そこで、体内の湿を取る作用(燥湿作用)がある花椒を使った料理が体調管理にかかせないものになります。気温が高い地域では暑さのため体調を崩すことがあります。このような場合の薬膳として、元気をつける(補気作用の食材:山芋、なつめ)、水分を補給する(生津作用:五味子、きゅうり、スイカ等)、体内の熱を取り除く(清熱作用:緑豆、なす、トマト等)食材をとることで対応します。薬膳はこのように自然環境がはぐくんだ料理といえます。しかし最近の中国にも海外の食文化がどんどん入ってきています。上海などの大都市のレストランでは大きな丸テーブルの上に料理を並べ、テーブルを回しながら食事をする風景は徐々に消えつつあります。またファストフードの食文化も入り込み、若い世代は積極的に他国の食文化を楽しんでいます。高血圧患者が日本の人口より多いといわれる中国の健康状況や食文化はこの先どうなるのか、予想が難しい時代です。
5:2ダイエットというのがあります。これは週の2日間は低カロリーの食事、残りの5日間は通常の食事をするダイエット法です。このダイエット法が体重や血中の脂質にどのような影響を示すのかを検討した英国の研究です。27名の肥満者を対象に、5:2ダイエットをする人(1週間のうち5日間は通常食、2日間は1日600kcalの低カロリー食:A群)と、1週間毎日通常の食事より600kcal少ない食事(女性なら1400kcal、男性なら1900kcal:B群)をする人の2群に分け、血糖や中性脂肪を比較しました。その結果、A群は体重を5%減量するのに平均59日かかり、B群は73日かかりました。またA群の方が血中の中性脂肪の値も有意に低くなりました。つまり体重や中性脂肪を低下させるために、毎日カロリーが少なめの食事をとるより、1週間に2日間だけ低カロリーの食事をとるプチダイエットの方が効果的だということがわかりました。ただ、低カロリー食の2日間は運動はしない方がいいと思われます。
BJN,119, 5, 2018 , 507-516
60歳以上の3,932名を対象に(2回目)に歩行速度を調査し、認知症の発症は、2006-07年と、2014-15年に調査をしました。その結果、1回目の調査で歩行速度が速い人の方がその後の認知症発症のリスクが63%低いことがわかりました。また1回目と2回目の間で歩行速度が低下した人の方が、その後の認知症の発症リスクが23%増加しました。認知機能レベルと認知症の発症の関連を検討すると、1回目の調査時点で認知機能レベルが良好であった人の方が、その後の認知症発症リスクが58%低い結果でした。また1回目と2回目の間で認知機能が低下した人の方が、その後の認知症の発症リスクが78%と高い結果でした。 脳機能低下と歩く速度の低下に何らかの関連があるため、歩く速度を調べることで脳機能低下を簡便に評価できる可能性があると考えられました。歩行速度が速い人ほど長寿であるという報告もあり、歩行は心臓、肺、循環器、神経、骨格筋などの機能を総合的に反映していると考えられています。
J Am Geriatr Soc 2018
食物繊維は、海藻、キノコ、果物、豆類、野菜、全粒穀物などに多く含まれており、食物繊維をサプリメントで食べるより、これらの食品をできるだけたくさん食べることの重要性が確認されました。西欧型の食事は脂肪や砂糖が多く、食物繊維が少なく、クローン病などの炎症性大腸疾患や体重増加、糖尿病のリスク増加との関連があるとされています。なぜ食物繊維の摂取が少ないとこのような病気になるのか、最近この問いへの回答となるのではないかという研究が報告されました。それは動物実験ですが、おどろくべき結果でした。低食物繊維食によって、マウスは体重や血糖、インスリン抵抗性(血糖を下げるインスリンの働きが悪くなっている状態)が急速に増大しました。その理由は、低食物繊維食を与え始めてからわずか3-7日後には、大腸の保護粘液層のバリア機能が低下し、細菌が大腸の上皮細胞を侵食し炎症をおこしました。また大量の腸内細菌が死滅しただけでなく、別の腸内細菌による不健康なバランス異常を呈しました。これらの状態がメタボを引き起こします。そこで、イヌリンという食物繊維をたくさん与えると、腸内細菌の数が増加し、多種の腸内細菌が出現して、マウスのメタボは改善し、体重が減り、血糖コントロールが良くなりました。しかし、サプリメントのイヌリンを与えると、このような改善効果は低いことがわかりました。やはり健康増進は食品でとることが大事です。
Cell Host & Microbe,23, Issue 1, p41–53.e4,2018