現代はストレス社会でうつ病になる人が多いといわれています。うつ病には食事も運動も影響することが最近の研究で徐々にわかってきました。うつ病で薬を服用している場合でも、特定の栄養素が不足していると治療効果が出にくいことがあります。うつ病の人は食事からの葉酸摂取が低い傾向にあります。そこで薬と葉酸を取った群、薬だけ取った群で10週間後の治療効果を検討すると葉酸も取った群の方が治療成績がいい結果でした。日頃から葉野菜や納豆など葉酸を含む食品を積極的に取ることが大事です。葉酸以外に、青魚に含まれるエイコサペンタエン酸やドコサヘキサエン酸も重要です。緑茶もうつ病に関係することが示唆されています。うつ病患者と健常者に直近の一か月の緑茶の摂取状況を調査すると、緑茶を週に4杯以上飲む人は、3杯以下の人よりうつ病のリスクが低い結果でした。緑茶の中のテアニンという成分がいいのではないかと考えられています。また、運動をあまりしない人はうつ病のリスクが高いといわれています。うつ病の人に薬は飲まず運動だけしてもらった場合、薬を飲んだうつ病の人と同じくらい治療効果があることが報告されています。野菜をよく取り、青魚を食べ、緑茶をよく飲んで、散歩などの運動をする生活習慣は特別なものではありません。やはり心身の健康は日頃の生活習慣が大事です。
栄養・運動・休養は健康の源です。
このコーナーでは、世界の最先端の栄養・運動・休養に関する情報をお届けします。
是非、健康生活の参考になさってください。
私たちは生きるためにさまざまな栄養素を取り入れていますが、栄養素の消化吸収により老廃物も産生されるためそれをうまく体外に出すことが健康維持・増進に重要となります。脳の老廃物には、ベータアミロイドやタウというたんぱく質があります。これらは認知症の発症と関連があるといわれています。そのためこれらの老廃物をうまく排泄できるかどうかが認知症予防に大切という米国の研究報告です。この研究はマウスの脳の老廃物を洗い流すクリーニングシステムと飲酒量の関係を検討した研究ですが、 人での飲酒量に換算して2合までだと脳の老廃物のクリーニングがうまくいくという結果でした。それ以上になると、脳に影響を及ぼしクリーニングはうまくいかないようです。従来から適量な飲酒は健康にいいといわれていますが、脳にも良い影響があると思われます。
Sci Rep. (2018) 8:2246 | DOI:10.1038/s41598-018-20424-y
犬を飼っていると散歩に連れて行ったり、社会的支援を得られたりして、心臓病のリスクを軽減するのに役立つといわれています。そこで40~80歳の343万2153人のスウェーデン人を対象に12年間追跡調査を行い、犬を飼っているかどうかと心臓病死亡リスクを検討した研究です。それによりますと、1人暮らしで犬を飼っている人は犬を飼っていない人に比べ、死亡リスクが33%、心臓病による死亡リスクが36%も低い結果でした。一方、2人以上で暮らして犬を飼っていると、死亡リスクが11%、心臓病による死亡リスクが15%低減する結果でした。つまり、一人暮らしの方が犬を飼っていることによる健康効果が大きいことがわかりました。犬を飼うことで活動量が増加するばかりでなく、精神的にもいい影響があるのではないかと考えられています。
Sci Rep. 7: 15821 | DOI:10.1038/s41598-017-16118-6
お腹の出た肥満ともなればメタボリックシンドロームではないかと心配することがあります。これはメタボリックシンドロームの診断基準に、お腹の周囲径が男性85cm以上、女性90cm以上でかつ血糖、血圧、血清脂質に異常ある場合となっていますので、だれしも肥満となってお腹がでていると心配します。しかし、肥満がない場合は、血糖、血圧、血清脂質に異常があっても大丈夫なのかということを検討した日本の研究です。肥満がない人の中で、血糖、血圧、血清脂質の異常と循環器死亡リスクを検討すると、血糖や血圧や血清脂質の異常が全くない人に比べ、1つ異常がある人、2つ異常がある人、3つ以上異常がある人の循環器死亡リスクはそれぞれ2.0倍、2.0倍、2.8倍となっています。つまり、肥満がないから大丈夫とは思わず、血糖、血圧、血清脂質に何らかの異常がある場合は、心臓病や脳卒中に注意する必要があります。
Diabetes Care 30:1533–1538, 2007